「子どもたちがロシアに誘拐されている」ウクライナ政府が非難

https://www.cbsnews.com/news/ukraine-news-russia-war-kyiv-says-moscow-kidnapping-children/

 

2022年8月8日 CBSニュース

 

 

 ウクライナ政府は、ロシアが何千人もの子どもを誘拐し、子どもたちを強制的にロシアに帰化させようとしていると非難している。そんな中、CBSニュースのクリス・ライブセイ特派員は、子どもたちをロシアから救出し、ウクライナの家に連れ戻した人物に取材した。

 マキシムとイヴァンの部屋の壁には、誇らしげにウクライナの旗が掛けられている。彼ら二人の少年はウクライナの音楽を聴き、伝統的なウクライナの服を着ているが、少し前にはロシア人になることを強いられていた。(写真)

 「ロシア軍は私たちを連れ去ったんです」と16歳のイヴァンは特派員に語った。

 二人はロシア軍が来たとき、ウクライナ南部の都市マリウポリの孤児院に住んでいた。少年たちは逃げようとしたが、ロシア軍に捕らえられ、8歳の子どもも含めて約20人の子どもたちと一緒に拘束されたという。

 「家に帰れないかと心配になりませんでしたか?」と尋ねると、イヴァンは「18歳になるまでウクライナに戻れないと思っていました」と答えた。

 ウクライナの当局者は、ロシアが子どもたちを組織的に誘拐し、彼らの身元を剥奪していると非難している。

 「ロシアはウクライナの子どもたちの誘拐を続けています」と、ウクライナ国連大使であるセルギー・キスリツァは5月に国際機関に語った。「ロシアに強制連行された後、子どもたちはロシア国民に不法に養子に出されました」

 ロシアのテレビは、「誘拐」ではなく「救出」だと主張し、ロシアの支配地域にいるウクライナの子どもたちの画像を放映した。ある動画では、ロシアの子どもの権利委員がウラジーミル・プーチン大統領に、「ロシア市民は大きな心を持っており、子どもたちを引き取るために並んでいる」と語っている。「それは非常に良いことだ」とプーチンは答え、そのための法的プロセスを早めることを誓った。

 国営テレビの別のニュースでは、ロシアの高官が、イヴァンやマキシムのような子どもたちをロシア軍の寄宿学校に入れることを提案している。これについてウクライナのイリナ・ヴェレシュチュク副首相は「皮肉なプロパガンダです」とCBSニュースに語った。

 彼女は「ロシアに連行された子どもたちことを思うと、とてもつらい。この子たちの両親は、ロシア軍によって両親を殺された可能性があります。彼らを連れ戻すのが私の使命です」と語る。ヴェレシュチュクは、親戚や保護者が子どもたちを追跡するのを支援し、その後、彼らの帰国についての交渉を行っている。多くの子どもは計り知れないトラウマを負っている。

 「ある12歳の少女は、母親を埋葬するために穴を掘らなければなりませんでした。彼女は兄弟も埋葬しようとしましたが、遺体が重すぎて引きずることができませんでした。髪の白い小さな子どもを見たこともあります。この戦争中に白髪になってしまったんです」

 しかしイヴァンやマキシムは、なんとか逃げ出すことができた幸運な子どもたちだった。マリウポリの孤児院の保護者であるアントン・ビレイのおかげである。「彼らを置き去りにすることはできませんでした」と彼は語った。

 救出のためとはいえ、危険な前線を横断することはできず、ポーランドリトアニアラトビアを経由してロシアに侵入する必要があった。バスで70時間かけて、夜明けにロシアに到着した。

 「ロシアに入る時、拘束される心配があった。多くのウクライナ人がいわゆる『フィルトレーション=ろ過』を通過できず、捕まっているし、私もそうなる可能性があった。でも、子どもたちはウクライナに戻りたがっていたんです」

 マキシムは、アントンを乗せたバスが着いたとき、寝ていたと言った。「アントンに会ったとき、私は彼を抱きしめました。幸せでした。とても長い間会っていなかったし」(訳注:おそらく安全のため、救出の詳細は語られていない。ロシア側の関係者に手引きを依頼したのかもしれない)

 2か月以上の監禁の後、少年たちはウクライナの西部の都市フメリニツキーまで無事に戻ってきた。特派員はイヴァンが、まだ救出されていない友人のフィリップにメッセージを送るのを見せてもらった。彼はモスクワの孤児院にいる。

 イヴァンは友人に、「まだウクライナに帰りたいかい?」と尋ねた。「もちろん帰りたいよ」とフィリップは答えた。

 だが、彼を家に連れ戻してくれる人はいない。強制連行された多くの子どもたちと同じように。