消されゆくチェチェン難民

チェチェン親ロシア派政権が、チェチェンと隣国イングーシにあるチェチェン国内避難民/難民キャンプを本格的に閉鎖し始めている。チェチェン親ロシア派政権首相ラムザン・カディーロフは、「8月5日までに避難民の総数を可能な限り減らすべきである」「イングーシの仮設宿泊センターにいるすべてのチェチェン人は年末までにチェチェンに戻るだろう」と述べる一方で、この「微妙な」問題に関する「行き過ぎた」意見や介入を望まないこと、そして難民は「自助努力」によってのみチェチェンに帰還するべきだと発言した。

インターファックス通信によると、2006年1月以来、チェチェンでは125名もの人々が誘拐されている(ロシア人権団体「メモリアル」による発表)。「戦争が終わった以上、チェチェン難民も存在しない」というロシア政府の公式見解によって、チェチェン難民は再びチェチェンという「ゲットー」に閉じ込められようとしている・・・。


8月2日付プラハ・ウォッチドッグの記事によると、2ヶ月前にチェチェン難民帰還事業のための特別委員会が発足してから、チェチェン国内でも複数の仮設宿泊センターが撤去され、避難民として登録されていた人々の半数以上がリストから削除されたという。避難民登録リストから削除されることは、当人にとって公的な人道支援を受ける権利が消失することを意味する。

同様のことは、現在約60の小規模仮設センター(CAP)があり、1万人から1万3000人のチェチェン難民をかかえている隣国イングーシでも進行中である。小規模仮設センター(CAP)の周辺では、2006年の秋までにセンターが完全に閉鎖されるという噂も流れており、識者や人権団体活動家は、それが事実であれば、何千人もの人々が路上に放り出されてしまうだろうと指摘する。

イングーシの首都ナズランにある小規模仮設センター(CAP)に入居中のチェチェン難民、アパーエフは、すでに「センターを出て行かなければガスと電気を止めると脅されている」一人。彼はプラハ・ウォッチドッグのインタビューに答えて、「現在起こっていることは、難民の人権を踏みにじる暴力です。大多数の難民にはチェチェンでの居場所などありませんし、政府が代替仮設住宅を提供してくれることもないのですから」と語っている。

「メモリアル」の発表によると、2006年1月以来チェチェンで誘拐された125人のうち、63名は救出され、8名は遺体で発見され、9名は捜査・審理中で、残りの45名の消息はまったくわからないままだという。ロシア政府やチェチェン親ロシア派政権がどのように言葉を飾っても、チェチェンで人々が殺されている事実は変わらない。というよりも、むしろ彼らが言葉を飾ることそれ自体によって、難民として生きていくという、最後の選択肢の一つさえも、チェチェン人から奪い取られてしまうのではないだろうか。そうであるなら、チェチェンの人々が残された最悪の選択肢を手にしたとき、それを責める資格は、少なくともロシア政府にはない、と思う。