国民投票法案:参議院傍聴記録(1)

国民投票法案に続いて、米軍再編法案*1少年法「改正」案*2が国会で強行採決されました。これが、恐怖の隠れ肥満、ではなかった、隠れファシズムというやつでしょうか。(邦枝)

2007年4月19日(木) 参議院 憲法調査特別委員会

衆議院に引き続き、国民投票法案の審議を傍聴するために参議院へ。「憲法審議ってば、今どうなってるの?」の紹介にしたがって、前日の夜に社民党近藤正道議員の事務所にFAXで申請をして、当日の12時30分に国会議事堂・参議院議員面会所に到着。…しかし、審議が開始される13時20分になっても、何事も起こらず。どうやら与党による連日の強行審議のせいで、与党議員を含む誰もが過労状態で*3、秘書が面会所まで傍聴券を配りにくる余裕もないらしい。

ということで、セルフサービスで参議院議員会館の近藤事務所を訪ね、傍聴券を受け取って、他の傍聴者と合流。先方の場当たり的な対応に思わず文句を言いたくなるが、考えてみれば、そもそも法案の審議自体、場当たり以外の何者でもないのであった…。


それはさておき、議場では当の社民党・近藤議員が投票方式についての質疑をしていた。与党案では、憲法「改正」の国民投票は「内容において関連する事項ごと」に行われることになっている。たとえば、「自衛軍保有するかどうか」と「海外派兵を認めるかどうか」という問いに対しても、憲法9条関連ということで一括投票が行われれば、私たちは個別の設問に対してそれぞれ賛否を表明することができなくなってしまう。要するに、全体として賛成か反対かという意思表明ができなければ、個別の設問に対してどのような意見を持っていても、私たちの投票は無効票になってしまうというわけ。

結論からいうと、与党は、新憲法草案のすべての条項を「内容において関連する事項」と見なして一括投票とする可能性さえ、完全には否定しなかった(この場合、私たちに答えられるのは、国会が作成した憲法案に賛成するか反対するかということだけであり、賛成が半数を超えた場合には憲法案がそのまま新憲法になる)。その理由は、「矛盾のない憲法体系」を保持するためだという。

つまり、「自衛軍保有」がOKなら「海外派兵」もOKで当然だし、そのためには「徴兵制」の規定も欲しいし、それに反対する人間はひねり潰したいから「治安維持活動」や「愛国心」も入れないと…ということで作成された憲法草案が「内容において」互いに「関連」する「矛盾のない憲法体系」であると彼らが判断すれば、「××には賛成だけど××には反対する」権利は、私たちから奪われる。

それにしても、法案提出者の保岡議員の答弁はひどかった。私は確信しているが、この人はときどき自分でも何を言っているのか解っていないと思う。「聞けば聞くほどわからなくなりますよ」という近藤議員の発言には、自民党関谷勝嗣理事長も笑っていたので、めちゃくちゃな審議をしているということは参議院の与党議員も承知の上なのだろう。

「他の有権者の判断に委ねようという有権者の意思を尊重する(ために最低投票率も設けないし、有効投票の過半数憲法を「改正」する)」という自民党葉梨康弘議員の発言も凄まじかった。自民党の中島啓雄議員は、「なぜ今審議を急ぐのかという話がありますが、なぜ今まで急がなかったのか、なぜ今まで憲法改正手続きの立法を放置してきたのか」というような勝手なことを言っていた。なぜこんな議員たちが今まで放置されてきたのか、そのことの方がよっぽど問題だと思うのですけど…。とりあえず、さっさと参院選で落選して、再チャレンジしてください、ということで。

憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報:
http://www.news-pj.net/kenpoushingi/

*1:簡単に言ってしまうと、国民の税金を、?米軍に貢ぎまって、?米軍再編の協力計画に従わない自治体への交付金を停止することで住民の反対運動をぶっ潰す、ための法案です。

*2:少年法「改正」案の問題点と強行採決の経緯については、保坂展人「どこどこ日記」をご覧ください。採決された与党「修正」案は、法務大臣さえまともに答弁ができないほどひどい内容とのこと。

*3:参議院での強行審議を進めるため、委員会には法案提出者である衆議院保岡興治議員や船田元議員らが衆議院の本会議を蹴ってまで参加していたりする。