チェチェン文化シリーズ?

 チェチェンと日本は、異文化そのもの。「チェチェン」という国名は知っていても、チェチェン人やチェチェン文化についてはなじみのないひとがほとんどではないでしょうか。そこで、たまたまご近所となったチェチェン人から聞いたチェチェンについての話を。

その1 チェチェン人はなぜ辛いものが好きなの?

 ご近所のチェチェン人の好きな食べ物を見ていると、辛いもの、特にキムチが好きなことに気がついた。個人的な好みなのかと思っていたら、チェチェン人はみなそうだ、という。
 はじめは私の頭の中で、「チェチェン」と「キムチ(彼らはサハリンの韓国人と同様に、チムチャ、またはキムチャと発音する)」が繋がらなかった。
 ところが、これにはチェチェン人と朝鮮民族ディアスポラとしての歴史が絡んでいたのだ。時は1944年の、チェチェン人のカザフスタンへの強制移住に遡る・・・

 プリスタフキンの半自伝的な小説、『金色の雲は宿った』に描かれているように、この時期スターリンは、チェチェン民族全体のカザフスタンへの強制移住(депортация)という暴挙を行った。このことはチェチェン人の間で世代から世代へと語り継がれている。
 さて、カザフスタンスターリン時代に諸民族の強制移住先となっており、チェチェン人の前に極東から連れてこられた朝鮮民族が、持ち前の勤勉さと農業技術で荒地を農地に作り変えていた。そして、朝鮮民族と出会ったチェチェン民族は、故郷に帰るにあたって、キムチの味と製法をたずさえて行ったのだった。
 というわけで、今も彼のお母さんはキムチを樽で漬けるのだそうだ。

(30.08.2009 AMPM