#448 ネムツォフ暗殺とチェチェン

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 2月27日に、モスクワで、ロシアの政治家ボリス・ネムツォフ氏が暗殺されました。ネムツォフ氏は対ウクライナ戦争にも強く反対していたということです。過去にチェチェンに関しても、プーチン政権の高圧的なやり方に抗議してきた人物です。

 これは2009年の記事ですが、彼の問題意識がよくわかる文章がありましたので、和訳しました。

 このような立場の人物なら、現在のウクライナへの干渉にも反対するでしょうし、プーチン政権にも睨まれることでしょう。そしてこの15年間、ロシアではプーチン政権にとって邪魔な人物は、次々と消されてきました。チェチェンだけでも、つぎのようなリストができてしまいました。

 「殺害されたジャーナリスト、人権活動家、政治家一覧」 http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090913/1252944622

 いろいろな意見があるとは思いますが、やはり、ウクライナに対する軍事侵攻は、チェチェンと同様の非道な行いだと考えます。

 私自身は、西側の情報源に多くを負っていますから、認識にいくらかバイアスがかかっている可能性も否定はしません。

 しかし、チェチェンへの不法な軍事侵攻をロシア政府が行い、「惨劇」としかいいようのない出来事が起きてきたことは、動かせない事実です。プーチン政権にはっきりと反対してきた人が、おそらくそのために暗殺されたことに、悲しみを感じずにはいられません。(大富亮)


 関連:ニューズウィーク記事:ネムツォフ暗殺?でロシア野党は壊滅状態 http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/03/post-3569_1.php



コーカサスを覆う「戦争の雲」――プーチンの政策は決して平和を呼ばない

 ボリス・ネムツォフ 「連帯反体制運動」代表/元ロシア連邦副首相:
 2009年8月26日、ウォール・ストリート・ジャーナル


 この10年間、ロシアを支配し続けているプーチンの最大の嘘は、「北コーカサスが安定化している」というプロパガンダだろう。これほど真実から遠い話もない。1994年、99年、そしていま、私たちは三度目のコーカサス戦争を目にしている。

 今年(2009年)6月22日に、イングーシのエフクロフ大統領が銃撃され、チェチェンでは人権活動家のナターリヤ・エステミーロワや、ザレーマ・サドゥラーエワが殺害された。先週も、ナズラニでテロが起こり、数百人が死傷する惨事となった。それだけでなく、ダゲスタンでは毎日のように警察官が襲われ、今年前半だけで128人もの死亡者が出た。

 チェチェンの人権状態もひどい。人権団体がまとめただけでも、今年74人が強制失踪し、16人が殺害された。こういった事実は、北コーカサスに広がる流血のカタログのたった1ページに過ぎない。

 「安定化」が失敗している理由はこういうことだ。プーチンは「地域の有力な氏族」と連携してこの地域をロシアの支配下に置こうとしているが、それがまず間違いだ。巨額の連邦予算と、白紙の小切手と引き換えに、腐敗した犯罪集団の忠誠を買い取り、彼らが言うところの「選挙」を支援する。その結果、この地域は連邦の法など通用しない地域に成り下がり、現地の権力者たちはますます市民を抑圧し続ける。

 ヒューマンライツ・ウォッチの報告によれば、親ロシア派のチェチェン当局は、反対勢力に参加したと疑われた人の非合法処刑や、その家族の住む家を焼くなど、ひどい人権侵害を繰り返している。チェチェンで活動する人権団体「メモリアル」の活動家は、常に当局の監視を受けている。暗殺された活動家・エステミーロワは、まさにチェチェンで起こっている「強制失踪」の問題を追っていた。

 一方で、プーチンが支援しているチェチェンの親ロシア派・カディロフは、これこそ個人カルトとしか言いようのないものを作り上げている。その裏付けは、現地の税収の7割から9割に及ぶ巨額の金を、ロシアが彼に与えていることだ。ところがそのために、この地域はほとんどロシアの法の埒外になってしまっている。

 ロシア連邦政府ののコーカサス政策のもうひとつの誤りは、民主的手続きを排除してしまったことにある。彼らにとって「選挙」とは、プーチンの政党である「統一ロシア」が100%の支持率のもと、100%を得票する行事のことだ。チェチェン、イングーシ、ダゲスタンは、もはやソ連時代に戻った感がある。政府に対する市民の影響力はすべて排除された。ロシアが頑迷にもイングーシで元KGB将軍のジャジコフ元大統領を支持し続けたことが、この地方での暴力的な反体制運動の原因になっている。

(中略)

 こうした一連の惨劇による教訓は何か。それは、今のようなシニシズムや抑圧は、北コーカサスの政治・経済と安全保障の問題に、何の解決ももたらさないということだ。これらの問題は、民主的で法に則った政策と、そこに住む市民に対する十分な配慮によってしか、解決されないのである。

http://fb.ilcannocchiale.it/?id_blogdoc=2321183

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