論評

「ただ拷問から逃れること―それだけを考えていた」

2007年10月24日 ラジオ・リバティ クレール・ビッグ アレクセイ・ミヘエフが、身に覚えのない犯罪を自白するために必要だったのは、警察による9日間の拷問だった。 殴打と電気ショックに耐えられなくなり、ミヘエフは、故郷のニジニ・ノブゴロドで車に乗せた1…

モスクワ劇場占拠事件から5年(3)

日本の全国紙としてはおそらく初めて、モスクワ劇場占拠事件の5周年に関するニュースが報道された。23日付の産経新聞が掲載した「露特殊部隊の“無力化ガス”正体判明」という記事によると、ロシア特殊部隊が突入作戦の際に使用したガスは、「1滴で巨ゾウをも…

ドゥブロフカ劇場占拠事件から5年

2007年10月23日 プラハ・ウォッチドッグ オレグ・ルキン 2007年6月1日、モスクワ検察庁は、チェチェン・ゲリラが「ノルド・オスト」の観客900名以上を人質に取ったドゥブロフカ劇場占拠事件の公式調査を打ち切った。 公式調査によると、人質のうち占拠犯に直…

モスクワ劇場占拠事件から5年(2)

22日付のモスクワタイムズに掲載されたルポルタージュを紹介したいと思う。記事のタイトルは「ドゥブロフカ:外国人の見た悪夢」。自身も人質となり、米国人の婚約者と娘を亡くしたカザフスタン出身の女性の目から見た、モスクワ劇場占拠事件が再現されてい…

モスクワ劇場占拠事件から5年(1)

2002年10月にモスクワ劇場占拠事件が起こってから、明日で5年になる。事件は、チェチェン人テロリストが約900人の人質を取ってモスクワのドゥブロフカ劇場に立てこもった10月23日に始まり、ロシア軍特殊部隊が劇場に強行突入した10月26日に終わった。少なく…

「単一文化、単一民族」:外国人お断り

人口と労働力が減少しているにもかかわらず、日本は移民や難民の受け入れに冷淡である。ジェフリー・ヨーク 2007年10月9日 Globe & Mail 東京―デニズ・ドーガンさんは、生まれ故郷のトルコの村で、長年差別と迫害を受けてきた。デニズさんは少数派のアレビ派…

アンナ・ポリトコフスカヤ

ナタリヤ・エステミロワ 2007年10月5日 グロズヌイ(ロシア) 彼ら――ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤと警察のセルゲイ・ラピン――が最後に会ったのは2003年11月、グロズヌイにあるオクチャブリスキー地区裁判所の荒れ果てた建物の中でである。彼は…

チェチェンの記憶――過去・現在・未来

記憶――、といってももちろん、チェチェン戦争自体が過去のものになったと言いたいわけではない。それどころか、未だ現在進行形で続くこの戦争には次々と新たな「日付」が書き加えられていく。 昔ある知人が、(沖縄の米軍ヘリ墜落事件について)「事件は忘れ…

ロシア下院選挙まで3か月 大統領、影響力保持狙う—与党支配と後継指名で—

2007年9月2日 読売新聞 【モスクワ=緒方賢一】ロシア下院選挙(12月2日投票)まで2日で3か月となり、プーチン大統領は一両日中に大統領令に署名し、選挙戦が正式に始まる。下院選の結果は、2008年春の任期満了後も国家運営への関与をめざすプーチン氏の権力…

アブハジア紛争におけるチェチェンの役割

August 15th 2007 - Prague Watchdog / Oleg Lukin Chechen role in the 1992-3 Georgian-Abkhazian war アブハジア紛争におけるチェチェンの役割 15年前の1992年8月、グルジアとアブハジアの間に戦争が勃発した。当時のグルジア議会議長(当時以下同様)エド…

「恐ろしい国」ロシア

必要なのは空港や豪華なホテルではなく法律だ http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q3/541450/ * 2007年8月2日 木曜日 * FINANCIAL TIMES 英国とロシアの対立の中で起きた外交官追放合戦は、反射的に冷戦の記憶を呼び覚ます。だが、これは誤解を招く反応で…

リトビネンコ事件:自国民の引き渡しにおけるロシアのダブルスタンダード

原文: http://www.rferl.org/featuresarticle/2007/07/bb5a26f3-ba8a-40ea-b358-8f4913779b38.html 2007年7月19日 ラジオ・リバティ ロシアは元ロシア情報局員のアレクサンドル・リトビネンコ暗殺事件の第一容疑者であるアンドレイ・ルボゴイの引き渡しを拒…

ロシア、チェチェン穏健派を故意に殺害

2007年7月7日 Telegraph 原文: http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/07/07/wmoscow207.xml クレムリンがチェチェン戦争を長引かせるために故意に穏健な独立派を殺害したという訴えが、チェチェン共和国の前議会議長の失踪に対する責…

テロリストの遺体引渡し禁止は合憲

原文: http://en.rian.ru/russia/20070628/67977135.html [6/28 RIA Novosti] 6月28日、ロシア憲法裁判所は、当局がテロリストと分類した人物の遺体を遺族に引き渡すことを禁止する法律が合憲であるという解釈を示した。問題となっていた法律は、「テロリス…

ロシアはチェチェンを二度騙した

−ロシア−チェチェン権限分割条約案をめぐって− ロシアはチェチェンに対し数々の悪事をはたらいていますが、国家レベルの公約を二度破棄しました。その関連事項は次の通りです。 (1)第一次チェチェン侵攻 ソ連崩壊後、旧ロシア共和国はかっての領域内の全…

「『勝者の歴史観』に歯止めを」

今朝の読売新聞におもしろい記事があったので紹介します。「どの国も自国に都合の悪い歴史からは目をそむけがちだ。だが、相手国に一方的な歴史解釈を押しつけるだけでは問題解決は望めない」。まさにその通りだと思います(邦枝)。

欧州人権裁判所に訴えを起こしたアダム・チターエフの物語

ノーヴァヤ・ガゼータ記者、アンナ・ポリトコフスカヤの記事からの抄録 ロシア連邦の人質 英語教師であるアダム・チターエフは、兄とともに欧州人権裁判所に訴えを起こしたために、ウスチ・イリムスク*1で逮捕された。 ノーヴァヤ・ガゼータ アンナ・ポリト…

「チェチェン共和国:はびこる拷問」(3)

ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書(2006.11)より、チェチェンで後を断たない失踪についてまとめます。ロシアの人権団体メモリアルは、2005年に316件の「誘拐」事件を記録していますが、そのうち150名が後に遺体で発見されました。報告書は、「チェチェ…

「チェチェン共和国:はびこる拷問」

国際人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチが、2006年11月にまとめた報告書「チェチェン共和国:はびこる拷問」から、チェチェンで今も蔓延する人権侵害の具体例を紹介します。チェチェンの人権侵害は、主にラムザン・カディロフ首相の私兵集団「カディロフ…

アンナを殺したのはプーチンだ!

「アンナを殺したのは、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンその人です」リトビネンコ氏が、暗殺未遂事件の約2週間前の10月19日に出演した"frontline"の会見映像を紹介します。プーチン大統領が、アンナ・ポリトコフスカヤの友人を介して彼女を脅迫していた…

ヒューマン・ライツ・ウォッチ報告書:『チェチェンに蔓延する拷問』

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が、チェチェンに「蔓延する」「組織的な」拷問についての報告書を発行しました。報告書の16ページにおよぶ調査の中では、100件以上の拷問が紹介されています。拘束された人々は、公的機関やチェチェンにある秘密収容所…

忘却の9.11

9.11から5年、あるいは33年が経った。2001年9月11日のニューヨーク――ハイジャックされた旅客機が米国の中枢を攻撃し、2973名が死亡した。米国は、報復措置としてアフガニスタンとイラクに戦争を仕掛け、2006年9月3日現在までに9.11の死者数を超える2974人以…

メモ:9.11から5年

「世界を変えた」9.11から昨日で5年になる。事件の後、ロシアのプーチン大統領は、即座に米国の「テロとの戦い」への支持を打ち出した。「テロとの戦い」は、それを推進する主体が「テロ」の温床となる構造的な不平等を際限なく拡大させる、終わりの見えない…

「チェチェンとイラクとパレスチナをつなぐもの」

チェチェンとイラクとパレスチナの共通点――その一つはこれらの国または地域が「対テロ戦争」という名の圧倒的非対称の暴力によって支配されていることだと思います。1994年から続く戦争によって、チェチェンでは約100万人といわれた人口のうち20万〜25万人が…