グルジアからの便り 2001.9.19

チェチェンの平和を祈念し、ユーラシアを行脚する寺沢潤世上人(日本山妙法寺)からの便りが編集室にも届いた。これから上人はストラスブルグの欧州評議会をめざして行動を開始するとのこと。仏教者の立場から平和運動を続ける寺沢さんの存在は貴重である。通信には、現在のチェチェン戦争と連続テロ事件をどう考えるかが示されており、興味深い。以下は抜粋。

南無妙法蓮華経

南コーカサスグルジアの古都、美しいトビリシを本日、出発して、欧州ストラスブルグの欧州評議会に向かいます。明後日21日から議員総会のチェチェン問題作業部会において、初めて、ロシア下院議員と欧州議員とチェチェン代表が二日間にわたって対話をします。

小子も出席するはずであったトビリシの国際会議も様々な圧力と妨害で流会となりました。小子の作成した決議案は、そのため国際会議の総意として採択する機会を失いましたが、この2年間、反戦と人権と人道の名において活動を続けているチェチェンNGOが連名で、共同声明の平和提案として発表することが出来ました。二ヵ月の抗議断食を続けた難民たちや、モスクワへの平和行進を計画し強制退去させられた難民代表をはじめ、チェチェン救国委員会、難民国際委員会、チェチェン人権委員会など四十以上の市民団体がこの声明に結集し、これまで準備してきた国際諸宗教のチェチェン平和ミッションが、その平和提案の実現の任務を委託されました。この決議を、来るストラスブルグの議員総会でロシア側、欧州議会に、鮮明にチェチェン一般市民の平和の意志を伝えることが小子の任務となりました。

この法戦の最中に、ニューヨーク、ワシントンの惨劇が演出されました。まさしくここ数カ年の間うれいてきた21世紀の第三次世界大戦の宣戦布告であります。第六天の大魔王が動きました。チェチェン戦争で演出された手法*が今まさに地球規模で再演されようとしています。冷戦後十年のすべての改革の破綻の結末であります。中東、湾岸、バルカン、コーカサス中央アジア、アフガン、カシミール、どれをとっても武力、経済力にものをいわせた左道、覇権の域を出ていません。西側の武力も、いわゆるイスラム原理主義の武力も、旧ソ連ロシアの武力も、第六天の魔王の眷属にすぎません。まさに寸善尺魔の感がいたします。しかしながら、外的な一切の現象は、ただこれ我が心中の反映に他なりません。

世界はチェチェンで起きたことが、旧ソ連ロシアの闇の権力がすでに法の統制から完全に自由となって平然とあらゆる世界的な犯罪、陰謀に手を染めつつあることに気がついていません。ロシア政府はもはや政府とはいえる代物ではないのです。もしや今度のアメリカへの公然の攻撃の背後に、この怖るべきロシアの陰謀があるとしたら、人類は核戦争の寸前にまで来ていることになります。おそらくチェチェンの人々は怖るべき代価をはらい、現代文明の無明の毒より心遂醒悟する最初の民族ならんことを祈ります。

お師匠様(藤井日達上人)の西天開教と一期の使命は、第二次世界大戦と同時進行でありました。高祖日蓮大聖人の本化の使命も又、全ユーラシアの大動乱と同時進行でありました。本師釈迦弁尼世尊の法華経の寂光の会座は、母国カビラ城の釈迦族の全滅の後であります。

遣使還告と心遂醒悟は大善と大悪とが感応する最後の如来秘密神通之力の他ではありません。日蓮一人南無妙法蓮華経と唱えしが、二人、三人、百人と次第に唱え伝うるなり、地湧の義とはこれかと仰せられました。

ユーラシアの全土に命のあるかぎり、この最後の秘法を唱え伝えましょう。合掌寺澤潤世拝有縁の人々 御中

注/チェチェン戦争で演出された手法:99年にロシア各地で爆弾テロが発生し、300人前後のロシア人が犠牲になった事件をさす。事件直後に当局は「チェチェン人のテロリストの犯行」と発表。事件の翌週にチェチェンへの軍事進攻を開始した。現在も犯人は逮捕されていない。