IHF:ウルマン事件−民間人殺害の無罪判決は殺人の承認

2002年1月にチェチェンの市民6人を殺害したロシア軍将校4人は、ロシアの法廷で、「単に命令に従った」だけだとして、無罪を言い渡された。が、将校たちの上官はこの命令を出していないと主張している。


5月19日、北コーカサス管区軍事法廷は、6人の民間人(妊婦、教師、児童を含む)を、意図的かつ非合法に殺害したとして訴えられていたエドゥアルド・ウルマン大尉、アレクセイ・ペレコフスキー少尉、アレクサンドル・カラガンスキー中尉、ウラジーミル・ヴォエヴォディン准尉に対して、無罪を言い渡した。2004年の4月にも、この4人の士官たちはロストフ・ナ・ドヌーの法廷で無罪になっていたが、ロシア最高裁判所軍事部の命令により再審が行われていた。

第一審と二審を通して、軍人たちは市民たちの銃殺の事実を認めつつも、被告たちは上位の指揮官からの命令を実行したにすぎないと主張してきた。しかし、当時の特殊作戦司令官プロトニコフ大佐は、そのような命令を下したことを強く否定した。二審では、陪審員は被告たちの行為が、現地状況と任務に対して妥当なものだったと、一致して認めた。スタニスラフ・ジドコフ裁判長は、陪審の評決について、「議論の余地なく、被告たちはすべての容疑に対して無罪だ」と評価した。

「この醜悪な評決は、被害者たちの家族だけでなく、すべてのチェチェン人のの横っ面を打つようなひどいもので、ロシアの司法に深刻な欠陥があることがわかる。とくに、チェチェン問題が関わるときはそうだ。この評決はロシアのメディアと社会にあふれるアンチ・チェチェンプロパガンダとまったくかわらない」と、IHF顧問であるエリザ・モウサーエヴァは語った。

5月19日の評決の当日、人権のための国際ヘルシンキ連合は、報告書「不処罰:チェチェンでの大規模人権侵害を進める軍 "Impunity: A Leading Force behind Continued Massive Violations in Chechnya"」を発行し、そのなかで「チェチェンで人権侵害を受けた数千の人々のうち、事実上、誰一人として正当に扱われておらず、紛争がとどまることなく続いている」と報告した。報告書はこのウルマン事件についても詳細に記述しており、被害者側弁護人による、司法当局の欠陥についての議論も含めて取り扱っている。つぎのようなもの:

・裁判は、ロストフ・ナ・ドヌーのような都市で行われるべきではない。ロストフには強い反チェチェンの人種差別主義者がおり、公平で論争的な審理ができない。

・裁判長が陪審員を指名するなど、法的手続の違反があった。

・被告の士官たちは、裁判が始まるまで拘置されることもなく、それ自体が「無罪」を判決を示唆していた。

http://www.ihf-hr.org/viewbinary/viewhtml.php?doc_id=6308