(手紙)真のロシアのインテリの輝き

 ●さん、コメントありがとう。アンナのことに関心を持ってくださって嬉しいです。

 昨日の東京新聞にも記事が出ていましたね。

 アンナの本で最初に日本ででたのは、『チェチェン やめられない戦争』NHK出版)です。これを読むと、アンナがロシア軍の側にも、チェチェンの独立派武装勢力の側にも与さず、チェチェンで暮らしている普通の人たち(その中には以前からチェチェンにいるロシア人も含まれます)に寄り添い、彼らの側に立って書いていることがわかります。
 この本は、ロシア連邦軍が国際社会の目の届かないチェチェンの村々で行った(そして現在も行っている)村民への暴行、虐殺、誘拐、身代金要求の数々について知らせています。その上で、なぜこの戦争がやめられないのか、という戦争にまつわる利権の構造までも暴き出そうとしています。

 今年になって、アンナの遺作と呼ばれる『ロシアン・ダイアリー』も英語から翻訳されたのですが、入手したもののまだ読んでいませんでした。一周忌を機会に、読み始めることにします。

 そのほか、存命中にNHKBSの比較的遅い時間帯に放映された、フランスのテレビ局による番組でもアンナの姿を見、彼女の活動について知ることができました。

 モスクワの劇場占拠事件のとき政府の派遣した特殊部隊による毒ガスで殺された観客の遺族をアンナが訪問し続け、支えてきたこと。ベスランの小学校占拠事件の際に調停しようと現地に向かう飛行機の中で毒殺されかけたこと。

 その後も何度も命を狙われたのに亡命しようともせず、マスハードフ大統領暗殺後ロシアによって据えられたカディロフ親ロシア政権の汚職を暴く記事の準備中に、プーチンの誕生日の10月7日、プロの殺し屋によって自分のアパートのエレベーターの中で銃殺されたのです。

 アンナは国際的にはジャーナリストとして高く評価されていますが、国内の報道記者の中では「浮いた」存在だったようです。記者たちの座談会記事を読んだことがありますが、その中で、「(カディロフになってから)チェチェンは復興してきている。誘拐などの問題はあるにしても・・・」という他の記者の発言に、アンナは「(誘拐されたり、暴行されるのが)自分の兄弟だったら、父親や夫だったら、そう言って片付けられるのですか」と反論していました。

 前にBS放送でアンナが出ている番組を見ていたところ、娘が覗きに来て「この人、ふつうのおばさんじゃない。」と言っていました。

 確かに、暗殺されたときまだ48歳でしたが、日本人からすると老けているアンナは、初老の女性に見えます。しかし、どの写真を見ても、彼女の面ざしからは、ロシアの真のインテリのかがやきが感じられます。(M)