No.293 今のチェチェン、トルコで抗議集会、核実験、パレスチナ
今回のチェチェンニュースは、次の三つの話題についてお伝えします。
戦闘と誘拐の続くチェチェン、BBCニュースで見る現地の様子
「今はどうなっているんですか」という質問が多いチェチェン。ゲリラ戦、誘拐、傀儡政権の支配、ロンドンでの暗殺未遂事件などの報道を通して現地の状況を見ていきます。トルコではディアスポラによる支援活動が活発です。
「愚挙」の意味ーー北朝鮮の核実験のこと
二つ目は、扇情的な報道以外はしーん、と静まり返っている感じのする北朝鮮の核実験について、考えをまとめようとしたメモです。書き落としていることもあるかもしれませんが、その都度考えていきたいと思います。
青土社の「ガザ通信」
最後に、「ガザ通信」という本と、イスラエルに対するアクションを考える集会のご案内をお届けします。パレスチナとは一見切り離されて続く私たちの生活から、あちら側につなぐには何をしたらいいのでしょうか? というような話で、ちょっととりとめのない話ですが、読んでいただけるとありがたいです。
イベント情報(各種)
(大富亮/チェチェンニュース)
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戦闘と誘拐の続くチェチェン、BBCニュースで見る現地の様子
最近のチェチェンの動きを、ざっと紹介したい。
あいかわらず散発的な戦闘というか、ゲリラ活動が続いていて、ロシア側の報道でも、道路に仕掛けられていた遠隔操作地雷のようなものが、ロシア軍の車列の通過をめがけて爆発し、兵士一人が死亡する事故があった。イングーシでも、ブービートラップで4人のチェチェン人警官が死亡する事件。こういう報道は、毎日のようにRIAノーボスチが流している。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090527/1243434168
そして、チェチェン独立派側の情報では、傀儡大統領ラムザン・カディロフの自宅に対して、ロケット弾や小銃での攻撃もあって、多少建物を壊したという。そういうことがあっても不思議ではない。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090528/1243510671
イングーシでは、治安機関の職員らしき人々、これもおそらく迷彩服なんかを着て拳銃をぶらさげた、あきらかにそのすじの人々にちがいないが、それが民家に突然あらわれて19歳の若者を拉致していった。若者が武装勢力に加わっていたかどうか、それともよくある強制失踪、つまり誘拐なのかは、わからない。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090528/1243470037
チェチェンの「復興」
ひさしぶりにチェチェン関係の情報を読んでいて、何も変わらないなあ、と思う。今のチェチェンの様子を見ることができるビデオBBCにあったので、紹介したい。サイトにテキストがあるので、得意な人は翻訳をおねがいします。とりあえず映像だけ見ていると、グロズヌイの中心部に作られた壮麗なモスクや、そこに集う人々の姿があって、これもまたチェチェンの「今」なんだと感じた。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8060624.stm (映像あり)
この記事には、ラムザン・カディロフの周辺には金があるが、チェチェン全体では失業率が75%にのぼることや、チェチェンの若者は銃しか持ったことがないからか、建設労働者もサービス業も、アゼルバイジャンやタジキスタンなどの旧ソ連圏からの出稼ぎで成り立っているような気配が伝わってくる。
独立派に参加した者の家族は、カディロフの手の者に脅迫され、誘拐される。家も焼かれる。これがチェチェン戦争の「チェチェン化」と呼ばれるものだ。家を焼かれた人がインタビューに答えた。
「若いやつらの怒りに油を注ぐばかりだ」
未来のチェチェンは、この言葉の延長線上にあるのかもしれない。こういった報道では決して語られていない言葉や、姿を見せない人々がいるのを感じずにはいられない。それは真面目に報道に関わる人なら、誰でも感じているチェチェンの「影」のようなものだ。その影が再び表に出てくるときに、またチェチェンが動き出すはずだ。
トルコでロシアに対する抗議集会
次は、少し元気なニュース。トルコのイスタンブールにあるロシア領事館の前で大きな街頭アピールが開かれた。トルコにいるコーカサス系の住民は、祖先がロシアから追い出されたという歴史があるので、支援運動も根強く、迫力がある。詳しくは下記の記事を。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090528/1243516092 (日本語と画像)
http://tinyurl.com/nmxb7l (トルコ語。映像あり)
『チェルケスに自由を! コーカサスに自由を! 5月21日は抵抗の日だ! 人道に対する罪を、決して忘れてはならない! ロシアはコーカサスから出ていけ! ロシアの殺人者はチェチェンから出ていけ! ーーそれが、私たちの叫んだ要求だ』
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「愚挙」の意味ーー北朝鮮の核実験のこと
日本のメディアは、北朝鮮の核実験のことをそろって「愚挙」と呼び、制裁強化を支持する内容だった。こういうのばかり読むと、何かいらいらするが、その正体がわからない、こういう時に、人の理解力というものが試されるのだろうと思う。
核兵器を持つことは、どの国であっても悪いことのはずだ。良いことだと言える人がいるだろうか? 北朝鮮が核実験をしたことは、そういう意味で「愚挙」だ。
それなら、私たちは、アメリカ、ロシア、中国その他の核に対して「愚挙」だと指摘することになるだろう。NPT体制の重要性を説く立場に立つのなら、イスラエルの核保有は「愚挙」で、日本政府としては経済制裁をかけなければならないことになる。
手始めに入植地の水で作ったスウィーティーを禁輸にし、ヨルダン渓谷開発計画を凍結してはどうだろう。( http://palestine-heiwa.org/feature/oda/ )
チェチェンその他、大国で抑圧されている少数民族の立場からすれば、NPT体制は、彼らに対する虐殺の「権利」を保証するものでしかない。過渡期的な手だてとしての意味まで否定することはできないけれども、人類が本質的に核と共存することができないのは、チェルノブイリ原発事故の時にわかっていたのではないだろうか。
アジアの軍拡競争を憂慮する立場に立つなら、日本に持ち込まれていた核兵器を、もしかしたら今もある核兵器を撤去させなければ、北朝鮮の核保有に反対する理由はないだろうし、日本で核武装論が強まるのを黙認したり、在韓・在日米軍をはじめとする圧倒的な軍事力を削減しないのなら、
必要なのは『アジアの平和』ではなく『我々の優位』だけ。
となり、これも国際的に通用しにくい話になる。さて、どんな意味で私たちは「愚挙」という言葉を使うのだろう。
私は、人間には人間が作り出したものを管理する力があると信じたいけれども、それは一度作ったものを解体する勇気があればの話だ。冷戦終結までの間、一度も核戦争が起こらなかったことを「安全」と呼ぶのは、危うい偶然をたまたまくぐり抜けてきた私たちの世界だけで通用する結果論にすぎない。
北朝鮮の核実験に対して、「愚挙」という言葉はぴったりなのかも知れないけれども、その意味によって、言おうとすることは180度違ってくる。
平壌宣言のあと、訪日した拉致被害者を、約束に反して日本に拘束し、六ヶ国協議で約束した重油20万トンの引き渡しも勝手にやめた。日本政府とメディアは一体になって経済制裁と北朝鮮バッシングに走った結果、相手の間違いは指摘できても、自分たちの間違いには目を背け、忘却に努めるしかないみたいである。
外からみればこういう感じだと思う。本来、アメリカと交渉して平和条約を結びたい北朝鮮にとっては、こういう日本は交渉相手としてあまり意味がない。今はむしろ、その忘却=歴史を私たち自身が掘り起こさなければ、対等の立場にはつけないのではないだろうか。
私たちが北朝鮮以下かって? たぶんそうだ。
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青土社の「ガザ通信」
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 人文・地歴・哲学・社会 > 政治
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,620円
最近手にとった、サイード・アブデルワーヘドによる「ガザ通信」という本が、それだ。この本は横組みで、メールの文章がそのまま本になっている。もう半年前になってしまい、世間の関心もあっと言う間に去った、あのガザへのイスラエルの襲撃の瞬間の証言だ。
解説者の岡真理さんの指摘するように、ガザという土地の名前は、新しく世界の人々の記憶に刻まれることになった。覚えていられるかどうかは私たち次第なのだが。
突然の戦火に見舞われた土地の人、アブデルワーヘド教授が、貴重なガソリンで発電機を回して作った電力をノートパソコンにつなぐ。窓の外にはヘリコプターやF16戦闘機、無人の偵察機が襲うべき目標を求めて轟音をあげている。遠くからは戦車砲の音が響く。子どもたちは眠ろうとしない。
それがフィクションなのか、それとも、通勤電車の中で、咳き込む人がいれば顔をそむけ、MP3プレイヤーから流れる音楽を聞きながら、もう少しだけでいいから眠りたいと思って目をつむる私たちの生活がフィクションなのか。
アブデルワーヘドの悲痛な訴えを、リアルタイムで受け止めていた人々にとっては、どうだったろう。どちらも事実だと知りながらも、向こうの世界の凶悪な現実感に打ちのめされずにはいられなかったのではないだろうか。私は、この本の文章と、志葉玲さんの写真を見て、知ってはならないものを見てしまった後悔のようなものさえ感じた。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%AC%A5%B6%C4%CC%BF%AE
この本はそういう「手紙」だ。私たちはいつも、事件の終わってしまった後になって手紙を読む。その時には、もう何もできないとしても。この時間差こそ、私たちの間にふさがっているものの姿なのだろう。どうやって乗り越えたらいいのだろうか。
この日曜日、東京では『スピークアウト for アクション:イスラエルを変えるために』という集まりがある。ボイコットをはじめ、二度とガザのような事件を起こさないために、具体的にできることを考える会になると思う。
分科会では、「戦争犯罪を裁かせる」をテーマに、イスラエルの指導者たちを国際法のもとに裁くために、国際刑事裁判所への付託を考える会がある。チェチェン侵攻について、プーチン首相の訴追*が問題になった直後なので、参考になる部分はとても多いはず。ぜひご参加ください。
http://nooccupation.web.fc2.com/090531invt.html
5/31(日) 場所 在日本韓国YMCA(千代田区猿楽町2−5−5)
JR水道橋駅徒歩6分、御茶ノ水駅徒歩9分、地下鉄神保町駅徒歩7分)
【地図】http://www.ymcajapan.org/ayc/jp/map1.htm
13:00開場
13:30〜15:00 シンポジウム
[パネラー]
板垣雄三(東京経済大学名誉教授)
東澤靖(弁護士/明治学院大学法科大学院教授)
役重善洋(パレスチナの平和を考える会)
山崎久隆(たんぽぽ舎/劣化ウラン研究会)
15:15〜17:15 分科会(下掲参照)
17:30〜18:30 全体会
* http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090510/
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イベント情報
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5/30 水道橋:広瀬隆講演会
「二酸化炭素温暖化説はなぜ崩壊したか エネルギー消費の正しい解決のために」
揺らぐ二酸化炭素温暖化説を科学的に議論する。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20090412
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5/30 渋谷:講演会 非正規&フリーターの労働運動はどうなっているのか
組合の外におかれてきた非正規労働者が立ち上がり始めている。
フリーター全般労働組合の清水直子執行委員長を招き、
今の課題と、これから何をなすべきかを考える。
http://ankoku-mirai.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/530-4ae7.html
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5/30 御茶ノ水:「沈黙を破る」
元イスラエル軍将校ノアム・ハユット氏来日緊急報告会
元イスラエル軍将校が来日、
占領地やガザでのパレスチナに対する加害の実態を内部告発する!
ドキュメンタリー映像や、ジャーナリストの土井敏邦さんとの対談も。
http://www.cine.co.jp/chinmoku/poster.html
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5/30 西早稲田:韓国と日本の市民社会の連帯を築くために
−2009年光州国際平和フォーラム「ODAと市民社会」報告
韓国が現在抱える問題点の共有、
国際的なレベルでの経験や情報の共有などをつうじて、
ODAに関する市民社会の国際的な連帯を構築するフォーラムの報告。
http://www.nindja.com/modules/eguide/event.php?eid=23
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5/31 水道橋:スピークアウト for アクション:イスラエルを変えるために
イスラエル製品/関連企業をボイコットするーー
イスラエルの武器生産・取引・使用の実態を明らかにするーー
指導者たちの戦争犯罪を裁かせるーー「歴史事実」の確認からはじめよう。
占領をやめさせ、共生するためのシンポジウムと分科会。
http://nooccupation.web.fc2.com/090531invt.html
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6/13 蒲田:『冬の兵士』上映会
かつてヴェトナム戦争時に、
帰還兵たちが戦場の現実をアメリカ国民に訴えた伝説の集会「冬の兵士」が、
イラクとアフガンの帰還兵たちによって復活した。
極端な人種差別や交戦ルールの無視など、
いままさに起きている戦場と軍隊の現実をあからさまに証言した、
50時間の記録を80分のドキュメンタリー映画に。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090521
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6/13 渋谷:第10回 表現者はリレーする いま、語り描き写し歌い舞うとき〜
とどけメッセージ キッチンの窓から ガレキの戦場から〜
たとえ職業としての表現手段を持たなくても、
子育ても毎日の食事作りや家事も「私は私らしく生きたい」
という思いを伝えて日々を生きている。平和を願う人々が声をあげる会。
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7/4 御茶ノ水:「終焉に向かう原子力」(第8回)
反原発・反再処理工場 7.4講演と映画の集い
ビデオ「なぜ警告を続けるのか」と、映画「六ヶ所村ラプソディー」上映。
京大原子炉実験所の小出裕章さんの講演「六ヶ所が映す不公正な世界」も。
地球温暖化によって、ふたたび原発政策が勢いづこうとしている。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20090427
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映画・写真展・連続講座
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『沈黙を破る』
考えるのをやめたとき、僕は怪物になったーー
2002年、イスラエル軍がヨルダン川西岸に侵攻。
その頃、「祖国への裏切り」と非難されながらも、
みずからの加害行為を告白する、若いイスラエル兵士たちがいた。
土井敏邦氏が13年間にわたって撮りつづけたシリーズ第四作。
http://www.cine.co.jp/chinmoku/
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MediR講座
『制作者との対話〜TVドキュメンタリーを通して社会を考える』
5/10-8/9 高田馬場
優れたドキュメンター番組を見、
制作者との討論を通してメディアリテラシーの養成をめざす。
スベトラーナ・アレクシエービッチに関する作品、
「ロシア 小さき人々の記録」(2000年放送)についての講座あり。
単独受講可能。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090417
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『チェチェンへ アレクサンドラの旅』
孫へのまなざし 平和への祈り ロシアの見たチェチェン
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『ビリン・闘いの村』
パレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のビリン村。
若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。
http://www.hamsafilms.com/bilin/
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