毎日新聞 ロシア:女性記者殺害 無罪破棄、疑念呼ぶ 「政治圧力だ」遺族側も被告側も反発

 プーチン前政権を批判していた女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさん殺害事件が新たな展開を迎えている。ロシア最高裁は先月末、事件の被告4人全員を無罪とした2月のモスクワの裁判所の判決を破棄し、審理を差し戻した。再審理は真相解明につながるとの見方がある一方、決定のプロセスが透明性を欠くことから、ロシア国内では「政治圧力が加えられたのでは」との疑念を呼んでいる。【モスクワ大前仁】

http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2009/07/10/20090710ddm007030018000c.html

 被告の弁護団も「(政府の)最高レベルによる決定」と反発する。被告と被害者側がともに「政治圧力」を口にする背景には、判決をめぐるメドベージェフ大統領の発言が念頭にあるようだ。

 大統領は2月の判決直後、検察官と捜査当局と面会し陪審員裁判で(立件できるように)働くことを学ぶべきだ」と叱責(しっせき)し、暗に判決を批判していた。

 「司法改革」を重要課題に掲げる大統領は、欧米諸国が強い関心を示す同裁判で、有罪判決を出すことにより、ロシアの裁判制度が機能していることをアピールする狙いがあるとの見方もある。

 ラジオ局「モスクワのこだま」のボロビエワ記者は、メドベージェフ政権が裁判に圧力をかけた明確な証拠がないとしながらも、「プロセスがゆがめられている恐れがあり、不可解な決定」と疑問を呈す。さらにロシアの陪審裁判では、4割近くの判決が覆されていると指摘。もし政権がポリトコフスカヤさんの事件で、裁判制度の健全性をアピールしたいのならば、実行犯の逮捕と背後関係の解明に力を注ぐべきだと主張する。