#361 モスクワ空港爆破・ウマーロフの犯行声明の謎
モスクワの事件について、チェチェン独立派・コーカサス首長国ののウマーロフ首長から、犯行声明ビデオが出た。それをめぐって、いくつか疑問が浮かんだので、整理してみたい。
・なぜプーチンは、この事件に「チェチェンは関係ない」と言い放ったのか。
・なぜ捜査当局とプーチンは「事件は解決した」としつこく発表したのか。
・なぜウマーロフは、声明を2度に分けたのか。
とりあえず、疑問はこの3つだ。時系列を見てみよう。
- 2011年 1月24日 モスクワ空港爆破事件 発生
- 1月26日 プーチン首相が、メディアの取材に対して「このテロにはチェチェンは関係ない」と発言した。 http://tinyurl.com/4nrnyoa
- 1月29日 ロシア捜査当局は、実行犯が北カフカス地域出身の20歳の男と特定、「事件は解明された」と発表した。ロシア政府は、男の似顔絵を公開した。(画像)
この男の写真or似顔絵が手に入らない。どこかにないですか?http://tinyurl.com/4ztb6dn
- 2月2日 プーチンがふたたび、記者団に「事件は全容を解明した」と言う。 http://tinyurl.com/4rqkyqw
- 2月3日 メドベージェフ大統領が捜査委員会や連邦保安局(FSB)の幹部との会合で、「『事件の全容が解明された』と述べるのは許さない」と言った。「事件は解明されていない。仕事をしろ」 http://tinyurl.com/4rqkyqw
- 2月4日 カフカスセンター経由で、ある声明文が出された。ドッカ・ウマーロフが指揮下の部隊を訪問し、そこで、「今年はロシアにとって、血と涙の一年になる」と、各地での自爆攻撃を予告するビデオ。 http://tinyurl.com/4ja68xp このビデオの中で、ウマーロフの側にいた若者が、ロシア当局が1月29日に発表した、モスクワ空港爆破事件の犯人と酷似しているという。ウマーロフが、実際に自分が関与したことをアピールするには、いい道具立てだとは思う。
- 2月7日 チェチェン独立派のウェブサイトカフカスセンターは、空港での爆破事件に対する犯行声明を、ネット上のビデオ映像で発表した。この映像は誰でも見ることができる。 http://tinyurl.com/4bphccn
カフカスセンターの英語版では次のように紹介されている。
「声明の中でウスマン首長は、モスクワでの攻撃は自分自身が命令したものだと明言している。また、こうした作戦を、今後も断固として継続するという。ウスマン首長は、現在の闘争の性格について、こう語っている。コーカサスのムスリムは、アッラーの名のもとに、イスラムの信仰と人々の尊厳、コーカサスのムスリムの土地の解放、そして、法と正義の確立のために、ロシア占領軍に対して戦うのだと」
こう整理してみると、最初に挙げた3つの疑問は、なかなか味なものがある。
あくまで推測だが、この事件には、チェチェン独立派の一部と、ロシア当局の間の何らかの連携または、連携の失敗が感じられる。プーチンは最初、情報機関から間違った情報を受け取った。または、プーチンにとって、この事件はチェチェンの仕業であってはならなかった。
だから、プーチンが影響力を持っている武力省庁(シラビキ)に対して、「お前ら、北コーカサスくらいは言ってもいいけど、チェチェンには関係ないって言え。捜査は幕引きだ」という意味のことを言った。目的はわからないが。
シラビキはそのとおりにした。ところがメドベージェフには怒られた。
それから数日たって、ウマーロフが、今回の件に関係するような、しないような、微妙な声明を出した(4日)。しかしそこに映っていた人物は、ロシア当局が出した顔写真だか、似顔絵だかにそっくり、らしい。
そうなると、プーチンの分が悪い。
さらに7日になって、今度は本格的に、ウマーロフが24日の空港爆破事件に犯行声明を出した。明らかに、4日の声明からエスカレートした内容だ。
4日の控えめな(?)声明は、誰に向けられていたのだろうか。
何にせよ、4日の内容は犯行声明としてのインパクトを欠くものだった。そもそも、犯行声明というのは、事件直後に出されてこそインパクトがある。それなのに、事件からすでに半月が過ぎていること自体、不可解だ。
ウマーロフとロシア政府の誰かさんとの間で、何かの謀議がまとまらず、ウマーロフは保険のために撮っておいたビデオを公開することにした。それが、7日のビデオだ。
まったく逆に、事件を「解決済み」にしたいヒトたちが、ウマーロフにビデオの公開を依頼したという可能性もある。にしても、仲の良いことである。
わからないことばかりだが、プーチンが梯子を外されたことだけは、間違いないだろう。
首相閣下の弁明が聞きたい。
(大富亮)
※なお、似顔絵が全然似てなかった場合は、この推理は取り下げます。
追記:コムソモールスカヤ・プラウダのサイトに、似顔絵とビデオを比較する画像とビデオがあった。教えてくれたFさんに感謝します。
Террорист, взорвавший «Домодедово», засветился в ролике с Доку Умаровым
http://www.tver.kp.ru/daily/25633.5/799333
素材を一つだけ借用:
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■イベント情報
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★ 2/11-16 川崎,京都:アルカサバ・シアター公演
『アライブ・フロム・パレスチナ ─占領下の物語』
http://kawasaki-ac.jp/theater-archive/110211/
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★ 2/12 早稲田:wam de ART 「韓国の現代美術と女性、政治」
http://www.wam-peace.org/jp/modules/topics/details.php?bid=46
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★ 2/14 文京:アジア記者クラブ:
チュニジア革命からエジプト革命へこのグローバルな動きをどう見るのか
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★ 2/19 地名:宇田有三さん緊急報告会「ビルマの今そして、これから」
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★ 3/19 代々木:武力で平和はつくれない WORLD PEACE NOW 3.19
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■映画・連続講座
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★ 『ビルマVJ 消された革命』
僧侶は、そしてビルマ市民たちはどう立ち上がったのか。
VJ(ビデオ・ジャーナリスト)たちが死を賭して伝えた未完の革命
http://www.burmavj.jp/
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許しを請うのではなく──
イラク帰還兵士が、自らの意志で再びイラクを訪れ、誓った。
この戦争と占領を終わらせるために、
イラクや世界の人々とともに歩みつづける。
http://www.peacetv.jp/movie.html
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★『沈黙を破る』
考えるのをやめたとき、僕は怪物になったーー
「祖国への裏切り」と非難されながらも加害行為を告白する、
若いイスラエル兵士たちがいた。
http://www.cine.co.jp/chinmoku/
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★『ビリン・闘いの村』
パレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のビリン村。
若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。
http://www.hamsafilms.com/bilin/
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