#372 ダゲスタン各所での不穏な動き

(右端がダゲスタンです)

INDEX

 ・北コーカサス、特にダゲスタン各所での不穏な動き
 ・ヨーロッパ人権裁判所、チェチェン人の行方不明でロシアに賠償を命令
 ・人権活動家、人権侵害の証拠をスイスで寄付
 ・ヒラリー・スワンク、人権団体から批判されマネージャー解雇


北コーカサス、特にダゲスタン各所での不穏な動き

 大規模なロシアの軍事行動こそ起こっていないものの、各所で政府による人権侵害や、武装抵抗が起こっているダゲスタン。ここを中心に、最新の北コーカサス情報を紹介したい。ほとんどは、ロシアの人権団体「メモリアル」によるもの。

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 10月21日、チェチェンの東隣にある、ロシア連邦ダゲスタン共和国のカカマヒ村の23歳の住民が、村の近傍で爆死した。原因不明。

 10月22日、同共和国のカラブダフケンツキー地区の線路上で爆弾が爆発した。列車の遅れは出たものの、比較的はやく復旧し、負傷者は出ていない。

 10月22日、2014年のオリンピックが予定されているロシア南部・クラスノダール地区のソチで即席爆破装置(IED)が発見された。このIEDは、ビニール袋に入った 5リッターのガス容器と、少々の付属品とともに発見された。容器には半キログラムの爆薬が入っていた。(仕掛けられていた場所などの情報は不詳だが)、
装置は何らかの原因で爆発しなかった。

 10月23日、チェチェンの西隣のイングーシ共和国では、ユヌースベク・エフクロフ大統領の護衛をしていた警察官が銃撃され、負傷した。ロシアにおけるイスラムをテーマとした国際会議の会場近辺で、交通規制にカッとした住民が銃を撃ったという報道も。

 10月23日、ダゲスタンのブイナフスクで、自動車が即席爆破装置(IED)で破壊された。この事件で死者、重傷者は出ていない。同日、何者かがハサブユルト市のサウナで、女性経営者を殴打し、敷地内で放火した。犯人はマスクをした軍人。経営者の怪我は大事に至らなかった。

 10月24日、ダゲスタン内務省と連邦保安局は、ハサブユルト地区・ノボサツリ村で武装抵抗勢力が掘った壕を発見したと発表した。この壕は4人が入れる大きさで、拳銃の部品や、医療品、衣類、靴、自動車のナンバープレートなどが発見された。壕は検証終了後に爆破された(なんとなく、がらくた置き場を吹き飛ばしたような印象:訳注)

 同日、デルベントでは、住民のザウル・アガムラードフが警察署に連行され、所長のアリフ・マゴメドフから、「髭を剃る」ことを要求され、自分でしないのなら、警官が力づくで剃ると言われた。アガムラードフは宗教上の理由から髭を剃っていない。警察署長は「政府の命令だ」と言ったという。ダゲスタン政府の報道担当者は、「政府はそんな馬鹿げた命令はしない」としたが、警察署長からのコメントは確認できていない。

 10月24日、ロシア内務省は、20日に、マハチカラで通貨偽造グループを摘発したと発表。「このグループは北コーカサスの過激派グループに資金を供給していた」という。摘発によって9人が逮捕され、偽造設備が取り押さえられた。この設備によって、月に2千万ルーブル(34,000ドル相当)が偽造されていた可能性
があるという。

 10月25日、内務省部隊は、ダゲスタンのキズリャル地区のシャウムヤン村で、住民の家屋を捜索し、即席爆破装置(IED)を発見した。IEDは、9リッターのバケツにアルミニウム粉とアンモニウムの爆薬、殺傷用にボルト、ネジなどが詰め込まれていた。この爆薬はTNT火薬5キロに相当するという。この家屋の持ち主は、「キズリャル破壊工作テログループ」のメンバーだったと報道されている。

 10月25日、チェチェンのシャトイ地区では、ロシア軍兵士2名が死亡した。兵士達はヤリシュ・マルディ村に駐屯していた自動車化砲兵部隊の兵士で、チェチェン政府職員(親ロシア派)と共同でパトロールを行っていた。死に至った状況は明らかになっていない。親ロシア派の政府当局者によれば、兵士たちは武装勢力待ち伏せ攻撃に遭ったという。

 10月27日、ダゲスタンのハサブユルト地区、バイラム・アウル村で、武装勢力内務省治安部隊との間に戦闘があった。部隊が村の近隣で偵察活動を行っていたところだった。これにより内務省側に1名の死亡者が出た。

 同日、ダゲスタンのタバサランスキー地区のフリク村で、宗教指導者のシラズトディン・イスラフィロフ氏(シェイフ・シラズディン・フリクツキー)が殺害された。ダゲスタン内務省の関係者によると、自宅の庭先で、拳銃で殺害されたもの。犯人は2人、いずれも迷彩服を着用していた。またこの関係者によれば、イスラフィロフ氏はダゲスタンのダーベントにあるイスラム大学の分校長で、かなり大きなモスクの宗務長だった。スーフィーズムのナクシュバンディ教派の有力者でもあった。イスラム専門家のロマン・シランティエフ氏によれば、イスラフィロフ氏はワハビストとの「教義論争」を続けていたという。

Eurasia Daily Monitor Volume: 8 Issue: 199
http://tinyurl.com/5vbdqfq


■ヨーロッパ人権裁判所、チェチェンでの行方不明でロシアに賠償を命令

 ヨーロッパ人権裁判所は、1996年にチェチェンの住民アブドゥラベク・タシュハジャーエフが行方不明になった事件に関して、ヨーロッパ人権議定書に反したとして、ロシア政府に対して、遺族への3万ユーロ(およそ300万円)の賠償金の支払いを命じた。

http://www.eng.kavkaz-uzel.ru/articles/18793/


■人権活動家、人権侵害の証拠をスイスで寄付

 チェチェン人の人権活動家ザイナップ・ガシャーエワさんは、スイスのベルン市にある「抑圧された人々を擁護する会」のビデオアーカイブに、所有する200本のビデオテープを寄付した。同アーカイブには、1990年代以降、人権活動家やジャーナリストらから寄せられた、400 本に上る人権侵害に関するビデオテープが収蔵されている。

「このアーカイブの目的は、二度のチェチェン戦争を記録することと、すべての戦争犯罪の責任追及にあります」と、ガシャーエワさんはドイツ国営放送に語った。ガシャーエワさんは、2005年11月に、レフ・コペレフ財団の自由人権賞を受賞した。また、ノーベル賞候補にもなった。

http://rf.eng.kavkaz-uzel.ru/articles/18794/


ヒラリー・スワンク、人権団体から批判されマネージャー解雇(映画.com)

 チェチェン共和国ラムザン・カディロフ大統領の誕生日パーティーに出席したことで批判を浴びているヒラリー・スワンクが、自身のマネージャーを解雇したと、ハリウッド・レポーター紙が報じた。

 スワンクは10月5日、カディロフ大統領の35歳の誕生日パーティーに出席。ジャン=クロード・バンダムやミュージシャンのシールらとともに、ステージ上で祝福の言葉を述べた。しかし、カディロフ大統領は拷問(ごうもん)や誘拐などのイメージが付きまとっており、人権団体はカディロフ大統領の行動を正当化する行為だと厳しく非難。スワンクはその後、「このイベントの意図を前もって理解していたら行きませんでした」と謝罪し、パーティー出席で受け取ったギャラをすべてチャリティに寄付すると宣言していた。

 つづき: http://eiga.com/news/20111101/2/


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