#376「ロシアはロシア民族のものだ」──モスクワで極右とネオナチのデモ

 前回流した、「ラムザニスタンにようこそ」という記事のつづきを少し。あるチェチェン人と、ネットでこの記事について話してみたら、興味深かった。

 「どうしてカディロフが、パレードの時に金を撒いたり、子どもや学生を沿道に並ばせるかわかる? 爆殺されたくないからだよ。山の人たち(抵抗勢力)は子どもは殺さないし、カディロフも後ろめたくて、殺されるのが怖いんだ。もし山の人たちに捕まったら、彼は、すぐに自分から謝ると思うよ。
 それから、ロシア人は〈コーカサスに税金をつぎ込むな〉って言うけど、チェチェンで取った石油の代金はどうなってると思う? みんな連邦に入ってるんだ。カディロフはその金を少しバックしてもらって、それでロールスロイスを買ってるだけ。ロシア人もチェチェン人も、みんな騙されてるんだな」

 た、たぶんそれには、日本人も騙されている・・・。

 さて、今日紹介する記事は、11月4日のAP電。コーカサス、とくにチェチェンにつぎ込まれている復興資金=税金には、ロシアの極右も怒り心頭。しかし今のチェチェン人の説が正しいとすると、この記事も少し違って読めてくる。

 どうしても西側メディアの描き出すロシア像というのは、対岸の火事というか、「ほら、ロシアってひどいよね」といういつもの論調に落ち着いてしまう。情報として事実ならいいんだけど、少し違和感もある。

 ところで日本でも、極右勢力がオーバーステイの外国人への脅迫やら、朝鮮学校への嫌がらせ、原発賛成どころか核武装推進とまで叫んでいる。私も新宿の路上で直接、目にしたことがあるけれども、モスクワのデモに比べれば、ごく少人数だった。あんなのが5千人もデモをするようになれば、確かにおっそろしいことだと、思った。(大富)


「ロシアはロシア民族のものだ」──モスクワで極右とネオナチのデモ

 5千人の極右ナショナリストとネオナチが、モスクワをデモ行進した。歩いたのは、労働者が多く住むモスクワ近郊の住宅密集地。彼らのスローガンは『ロシアをロシア人の手に』『今日の〈移民〉は明日の占領者だ』など。そしてユダヤムスリム系に対する差別語や卑猥な言葉がコールされる。参加者の多くは若者で、マスクと目出し帽をして、顔が見えない。彼らが敵視するのは、コーカサス地方からやってくる「色の黒い」移民と、政府がコーカサスに注いでいる税金だ。ナチ式に敬礼するデモ参加者と数百人の警官で通りは埋め尽くされ、交通渋滞が起きた。

 「あらゆるロシア人がここに来ているんだよ。サッカーファンも、スキンヘッドも、国家社会主義者もだ」と、参加者の中でも年配の、〈ロシア民族〉という組織のリーダーであるドミトリー・デムシュキンは言う。「何を要求しているのかをはっきりさせようって言うわけだ」と。彼は違法移民への反対運動をしていて過激派団体として活動を停止させられた〈スラブ連合〉というネオナチグループのリーダーだった。

 ここ20年間、暴力的な排外主義者のグループは増加の一途をたどっている。彼らは非スラブ人や、反・排外主義の活動家を殴打したり、実際に殺害してしまったりする。もともとはソビエト連邦の一部だったコーカサスや、中央アジアからの移民の増大に対して、あまり上品でないやりかたで対抗しているのである。

 ウラジーミル・プーチンがロシアをかつての強国へと再建しようとしたのは、結果としてこうした排外主義グループを勢いづかせることになった。プーチンは二期の大統領と一期の首相を経て、また来年の大統領選挙で当選するとみられている。

 この10月にも、クレムリンのすぐ近くで警察とサッカーファン、排外主義者たちが衝突するなど、ヘイト・クライム(人種差別犯罪)のかつてない増大に、警察も対処を迫られている。しかし彼らの限りない憎悪を抑えるのは容易ではない。

 多くのロシア人は排外的な感情を持っており、たとえばチェチェンに送られる多額の資金についての怒りの世論は、明らかに高まっている。チェチェン戦争のあと、地域の安定のために税金がつぎ込まれてきたが、貧困はいっこうに収まらない一方、傀儡政権の首長カディロフは自分の財産を見せびらかしているからだ。

 デモでは『コーカサスに食べさせるのはやめろ』というスローガンも聞かれた。汚職に反対する活動家のアレクサンドル・ナヴァルニーが考え出したものだ。彼に言わせれば、プーチンの与党「統一(イジーナヤ)ロシア」は「詐欺・泥棒の連合(イジーナヤ)だ」と手厳しい。

 「これが我々の国なんだ。だから、俺たちの血を吸って生きているスリ師どもを根絶しなきゃならない」と、弁護士でもあるナヴァルニーは言う。デモでは「統一ロシアは下野しろ!詐欺師と泥棒どもは下野しろ!」と叫ぶ。

 2005年にロシア革命記念日が廃止されて以来、毎年「ロシア行進」とよばれるデモが行われている。当初、新しい祝日は極右国家主義者に奪われたかのように、モスクワの中心部を数百人のスキンヘッドがデモ行進し、彼らはナチ式の敬礼と差別的なスローガンで人々の度肝を抜いた。

 翌年、このデモが禁止されても、極右たちは警察との衝突など恐れることなく行進し、2007年からは市の近郊へと所を移したのだった。そして今年は、モスクワだけでなくロシアの各地で、数百人規模のデモが行われた。

 専門家によると、ロシアには、数千人のネオナチと極右活動家がいるとされる。ロシア連邦の人口1億4千200万人のうち2/3はロシア民族が占めている。極右らは、ロシア民族の絶対的な権利を要求している。残り1/3の人口に100以上の民族籍があり、うち数十が、ムスリムを中心とするコーカサス地域にいる。

 昨年だけでも、320人以上の国家主義者たちがヘイト・クライムで有罪を宣告された。中には、マスクで顔を隠した過激派がコーカサス系住民を殴打して殺害した事件があった。犯人は十代の少年たちだった。人権団体の「SOVA」による。

WP: Chanting `Russia For Russians,' Thousands Of Nationalists And Neo-Nazis March Through Moscow By Associated Press, Published: November 4
http://tinyurl.com/6tstjgy

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