#386 追加情報:ドック・ウマーロフ首長、市民への攻撃の停止を命令す

 ロシアでの「プーチン暗殺未遂事件」報道に関連して、もう一つ追加情報をお送りします。カフカスセンターのサイトに、2月上旬に掲載されたもので、論評のようなものを、その後に書きます。とりあえず、どうぞ。

  
 
■ウマーロフ、市民への攻撃停止を命令

 (2012年2月3日、カフカスセンター、抵抗勢力のウェブサイト)

 チェチェンイスラム主義抵抗勢力のリーダー、ドック・ウマーロフは、ビデオメッセージで、ロシアの一般市民に対する攻撃を停止するよう命じた。ロシア各地での対政府抗議行動から、すでにプーチンは大衆的支持を失っていると判断したため。

 カフカスセンターに投稿されたビデオの内容は次のようなものだ。

 「私は、ロシアでの作戦準備中のすべての特殊グループに対して、平和的住民に対する攻撃を停止するように命じる。現在、ロシアで起こっていること(大規模なデモなど)から、すでにロシアの大衆はチェキストプーチン政権を支持しておらず、むしろ人々はコーカサスにおいてイスラムに戦いを挑んでいる政府の、人質であるといってもいい」

 「チェキスト」とは、ロシアでよく使われる秘密警察員という意味の用語で、彼らは元KGBエージェントであるプーチンのもと、ひときわ権力を強めた。

 3月4日の大統領選挙で、プーチンは歴史的な、3期目を務めるロシア大統領になると見られているが、これまでのロシア全土にわたる冷徹な支配も、反体制派の大規模な抗議行動によって揺さぶられている。

 「もしこの平和的住民たちが、イスラムに対する戦争に加担しないのであれば、我々の信仰は、この人々に手を触れないようにと、告げることだろう」とした上で、「この人々は、確かにプーチンを支持してはいない」と強調した。

 ウマーロフは、ここ数年、ロシアによる暗殺攻撃を何度も回避してきた。ビデオの中の彼は、雪で被われた森の中で、カーキ色の軍服を着て、二人の同志にはさまれて座っている。

 市民への攻撃を停止したあとは、「正確にロシア側の治安部隊や、堕落した政府、およびアラーの敵に対する特殊作戦を実行する」と語った。

 カフカスセンターは、ウマーロフはこの「布告」によって、ロシア国民の「地位を変更」したものと評価する。

Source: AFP Kavkaz Center
http://www.kavkazcenter.com/eng/content/2012/02/03/15749.shtml



 このニュース、知っている人はいましたか。私は知らなくて、人に教えてもらったばかりです。

 ドック・ウマーロフは、これまで「ロシアの一般市民も攻撃する場合がある」と言っていたので、方針転換をしたことになるのだが、この手のニュースは、まったく報道する価値はないようだ。

 以前も、第三代大統領のマスハードフがロシアに対する「一方的停戦」を宣言したことがあったが、それはほとんどニュースにならず、その直後にロシア側に暗殺された(!)ことだけは、辛うじて報道された。この情報のアンバランス。

 言うまでもなく、ロシア政府のような大国の政府は、国営通信社やテレビをいくつも抱えていて、そこでは嘘でも本当でも世界中に情報を発信できる。受け身で待っていると、その怪しげな、しかし声高な情報に対して、過去の事実をもとに反論することしかできない(とくに、今回のようなケース)。

 暗殺事件報道と、このウマーロフの声明が、対になっているわけではないものの、圧倒的な情報発信資源の差というものを、まざまざと感じる。

チェチェン戦争は、そもそも、プロの関取と中学生が同じ土俵で相撲を取るような、非対称の戦争だ。しかも、関取(ロシア)がむりやり中学生(チェチェン)を土俵に引きずり上げた経緯がある。それを正確に伝えるには、どんなことをしたらいいのだろうか。途方に暮れる。

 なお、3月8日は、マスハードフが殺害されて7年目の記念日です。
 くわしくは、こちら: http://chechennews.org/chn/0508.htm

(大富)
====================================
チェチェンニュースは、ロシアによる対チェチェン軍事侵攻と占領に反対し、平和的解決を求める立場から発行している無料のメルマガです。2001年から発行しています。▼新規購読はこちらから: http://chechennews.org/ (チェチェン総合情報)▼ぜひ、発行継続のためのカンパをおねがいします。いくらでもかまいません。▼〈郵便振替口座番号 00130-8-742287 チェチェンニュース編集室〉〈ゆうちょ銀行 019店 当座 0742287 チェチェンニュースヘンシュウシツ〉▼ツイッターやってます: @genpatsu_diary ▼転送・転載・引用歓迎です。商業媒体への転載の際は事前にご相談ください。よろしければご意見、ご感想や情報をどうぞ: editor@chechennews.org ▼発行部数:1350部 発行人:大富亮
====================================

以下は(ラジオ・リバティー、2012.2.27)(抄)


(ロシアのチャンネル1で放送された暗殺未遂容疑者の一人、アダム・オスマエフ)

 専門家たちの疑問は、数週間前に逮捕された未遂犯らが、今日になってテレビで公表されたことだ。

 「明白なのは、この未遂事件が、プーチンの選挙キャンペーンの、もっとも重要な時期に公表されたということです」と、軍事評論家のアレクサンドル・ゴリツは語る。「このニュースが報道される前、多くの有識者が指摘していました。何らかの新しい動きが必要だと。プーチンがこの国にとって重要な人間であること、ロシアの敵からどれだけ憎悪されているかを示すために」

 チャンネル1の報道では、ウクライナとロシアの情報機関が、1月4日に、オデッサの町のアパートで爆発があり、爆弾を作っていた容疑者一人が死亡、もう一人が逮捕されたというものだった。ウクライナ情報機関はこの報道を認め、さらに2月4日に、逃亡していた容疑者をもう一人逮捕したことを明らかにした。この容疑者は、北コーカサスイスラム国家を樹立しようとするグループに所属していると報道されている。

 選挙期間中にプーチン暗殺未遂が報道されたのは初めてではない。よく似た事件は、2008年の大統領選挙投票日にも発生している。

http://www.rferl.org/content/foiled_plot_raises_questions_among_putin_critics/24497742.html