#407 世界中で消されていくチェチェン人たち、難民問題、その他
なんだかいろいろな事件が起きまくっている。メモをまとめてみた。
FBIが、ボストン爆破事件の容疑者の知人のチェチェン人を射殺した。自宅での事情聴取中に。このチェチェン人、イブラヒム・トダシェフ(27)は、2011年に起こったという別の殺人事件についても事情を聞かれていたらしい。まるでミステリーの導入部のような事件。5月22日のこと。
http://www.cnn.co.jp/usa/35032426.html
調べていると、またわからないことが出てくる。
共同通信の報道だと、「調書にサインさせようとしたところ、刃物を持って暴れだしたので射殺した」。何だそれは。そもそも刃物がすぐに取り出せるような自宅で調書とりもないだろう。
そして、結果、「射殺せざるを得ませんでした」と言われても、不自然さが残る。アメリカの捜査当局は一体何をしているのだろう・・・
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130523/amr13052311060006-n1.htm
ところで、チェチェン独立派の chechencenter.info によると、トルコで、チェチェン支援者のメベット・ウンル氏が何者かに殺害された。ウンル氏はイチケリア・チェチェン共和国(つまり独立派)の名誉領事で、祈りのために事務所を出てモスクに行こうとしていたところを、来客を装った何者かに銃殺された。犯人は逃亡。5月22日のこと。
トルコはロシアから近いためか、チェチェン難民の数も多いし、反対にロシアのエージェントもたくさん入り込んでいる。それで、過去にこんな暗殺事件がイスタンブールであったのを思い出した。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20111017/1318861036
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20111022/1319249025
何人ものチェチェン人が、白昼堂々イスタンブールで殺されているが、それらはいずれも未解決。今回、トルコで殺されたチェチェン支援者のウンル氏は、もともとチェチェンの血をひいているのだという。
http://news.yahoo.com/prominent-chechen-advocate-shot-dead-turkish-capital-151031055.html
トルコの難民支援団体イムカンデルは、ウンル氏の殺害について「チェチェンの親ロシア派、カディロフ政権の仕業」だと声明している。トルコには今もチェチェンからの難民が流入し続けている。
こんなふうに、カディロフ派は海外に出たチェチェンの難民に対して暗殺攻撃を続けている。
チェチェンでカディロフに捕えられ、その監獄から出て生き残って、オーストリアに逃げたウマール・イスライロフという人物は、ヨーロッパ人権裁判所で自分の体験を暴露しようとしたが、2009年の1月、ウィーンで殺害された。オーストリア警察によれば、犯人はカディロフの部下のレチ・ボガチュロフという名前の男だった。
ボガチュロフはすぐに姿を消した。逮捕状も出たが、今、ボガチュロフはチェチェン内務省の局長になっている。ロシア政府は、オーストリア政府からの引き渡し要求には、一切協力しようとしない。
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20111107/1320666827
悪夢。
そのオーストリアで、新たにチェチェン難民の母子が強制送還の危機にある。夫と兄弟はロシア軍に誘拐され、行方不明。現地の支援者は、「このままでは母子は送還され、弾圧されてしまう。最後の望みは人道的滞在許可で、署名を集めている」とても人ごととは思えない。日本でも大勢の難民が、難民認定を受けられず強制送還されている。
http://www.waynakh.com/eng/2013/05/chechen-mother-and-her-children-face-extradition-from-austria/
ところで、「プーチンさんはすばらしい」と言ってロシア市民になったフランスの俳優ジェラール・ドパルデューが、カディロフからグローズヌイに家を与えられた。その上、息子を失ったチェチェン人に扮して映画出演の予定。どう見てもチェチェン人には見えませんが。
http://mainichi.jp/english/english/features/news/20130522p2g00m0et023000c.html
俳優エリザベス・ハーレーと、ドパルデューが、ラムザン・カディロフと仲良くしている様子を、写真入りでデイリーメールがお届けする記事。
記事のタイトルは「チェチェンから愛を込めて」。いい気なものだ。
カディロフが人権活動家ナターリア・エステミーロワを惨殺したことはほぼ確実だが、まるでそんな事、なかったみたいだ。
今、見てきたのは何だったろう。世界のさまざまな土地で、追い立てられ、嘲笑われ、何か大きな力にひきちぎられるようにして死んでいくチェチェン人たちの姿、ではないだろうか。
日本の人権派の政治家の間でも、「ボストンみたいな事件があるから、難民受け入れには二の足を踏まざるをえない」というような話が回っているのだという。
私はそういう話を聞くたびに、いきどおっている。そんな言葉では足りない。
難民をめぐって、こんなにもひどいことが起こっているのに、根本的な原因に目を向けないばかりか、その末端にいる難民にさえも、見てみぬふりをしようとしているのか・・・。
日本にも、チェチェンを含め、さまざまな国から難民がやってきている。その人々を受け入れるのは日本の義務だし、それを平和にやりとげるために必要なのは、社会が暖かく包摂することだ。収容所に閉じ込めるのではなく。迷惑者や余計者扱いをするのではなく。たぶんこれは、ボストン爆破事件の背景にもどこかでつながる。
難民たちを受け入れることで、私たちはようやく、世界で起こっている苦しみに気がつくだろう。チェチェンを例に取るなら、ロシアによる対チェチェン軍事侵攻がなければ、こんなことは起こっていない。根本的に事態を変えるためのキーポイントはそこにある。
難民条約の真の目的というのは、実は私たちの側からの〈発見〉──何か、あてはまる言葉に足りないのだが── にあるのではないだろうか。
(大富亮)
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