「ロシアの女優、映像プロデューサー、オリガ・コンスカヤさんが亡くなりました」

映像作家の岡田一男さんの追悼文: http://chechenchildren.jpn.org/oliga.pdf

ロシア生まれでモスクワ芸術座出身の舞台女優であり、優れた映画のプロデューサーとして、夫である映像作家アンドレイ・ネクラーソフを支えていたオリガ・コンスカヤさんが、5 月 28 日亡くなりました。 まだまだ沢山の仕事ができる 45 歳での死です。こころからお悔やみ申し上げます。
私は、 「暗殺!リトビネンコ事件」の公開に先立った作品キャンペーンに来日されたとき、一回だけでしたが昼食を共にして、ご夫婦の素晴らしい人柄に触れました。私にとっては、前作の集合住宅連続爆破事件を追った「不信」の方をもっと高く買っておりましたが、 「暗殺!リトビネンコ事件」の公開に踏み切った配給会社の決断には心から敬意をあらわしたものでした。
オリガは、忙しいアンドレイを支えて細かい雑事をこなしていました。見ず知らずの私に、彼らが英国の大女優ヴァネッサ・レッドグレイヴと共に作った「チェチェン 子供たちの物語」のビデオを手配してくれたのも彼女でした。
彼女は痛烈な正義感の持ち主でした。祖国の侵略戦争に走った政治家や、その走り使いをする自称、芸術家を許すことができませんでした。アンドレイの先輩であり、現在、ロシア映画人同盟議長でもある、映画監督ニキータ・ミハルコフが、ロシアの創作活動に携わる全ての芸術家の名の下に、プーチン大統領の3選出馬を請願したとき、敢然と世界の芸術家は、恥知らずのニキータをボイコットすべきであると呼びかけたことは、いまだ記憶に新しいことです。そうニキータ・ミハルコフとは、きわめて偽善的な作品であり、プーチンの「チェチェン政策イデオロギー
の映像化である 「12人の怒れる男たち」の監督であり、 主演者です。ニキータ・ミハルコフは、確かに演出力もあり、優れた監督ですが、私は今、亡くなったオリガの厳しいミハルコフ評価をかみしめて思い起こしています。
秋には、彼女が初めて自分で演出した、ロシア・グルジア戦争をあつかった映像作品「ロシアの教訓」の公開が予定されているそうです。彼女の冥福を祈ると共に、アンドレイ・ネクラーソフ監督が、亡くなったオリガの分も併せて創作分野で、今後も活躍してくれることを祈って止みません。

2009 年 6 月1日
チェチェンの子どもたち日本委員会
共同代表 岡田一男 (映像作家)