ポリトコフスカヤ殺害グループ、無罪判決は取り消しに(6/26 モスクワタイムス Alexandra Odynova)

 弁護士が依頼人たちのために勝ち取ったのは、わずか4か月間の無罪放免だった。6月25日、ロシア最高裁判所は、アンナ・ポリトコフスカヤ殺害事件の犯行グループ4人の無罪判決を取り消し、再審を行うよう、決定したのである。

 検察側が、前回の裁判での訴訟指揮の問題点を指摘し、被告人たちに対する心証を挙げたあと、最高裁判所の軍事部会は、陪審員の全員一致の評決を取り消す決定を下した。

「訴訟の原則は、(前回の裁判の中で)侵害されてきました」と、ヴェラ・バシュコフスカヤ検察官は最高裁判所で発言した。一方、弁護側のムラート・ムサーエフ弁護士は「どんな規則違反があろうと、すべて検察側にとって都合がよかったはずだ」と反論。

 (オブザーバー参加の)アンナ・ポリトコフスカヤの遺族の弁護士であるアンナ・スタビツカヤ弁護士は、弁護側の発言を支持して、こう語った。「前回の陪審員の評決は論理的なものだったと思いますね。われわれは無罪判決を破棄しないよう、法廷で求めましたが・・・」
 最高裁の決定の申し渡しのさい、小法廷は記者とカメラマンで立錐の余地もなかった。3人の被告人のうち、チェチェン人のイブラギム/ジャブライル・マフムードフ兄弟と、元連邦保安局職員のセルゲイ・リャグーゾフも出廷した。

 4人めの被告である、元警官のセルゲイ・ハジクルバーノフは、別の事件で逮捕されており、彼は監獄からビデオを通してこの裁判に参加した。監獄の鋼鉄のドアが開閉するやかましい音は法廷にも伝わっていた。

 最高裁の裁判官たちは、50分間かけて合議を行なった後、再審を命じる決定を発表した。ムサーエフ弁護士は記者に対し、この決定が下ることは予期していたといい、ロシア政府が、これ以上高位の当局者が犯人として追及されないように、この事件に干渉していることを批判した。

 「この決定は、相当上の方で了承された内容に違いない」と、彼は法廷で語った。「検察官は再審の法廷で、彼ら自身のミスを訂正することになるだろうし、陪審員にも圧力をかけるだろう」

 マフムードフ兄弟とその母親は、涙をぬぐいながら、ジャブライルは記者たちにかろうじてこう語った。「私たちは決して逃げるつもりはない。どんなに裁判が長引こうと、真実のために戦うだけだ」

 4人の被告人のうち3人は、2006年10月7日に起こったポリトコフスカヤ殺害事件の中で、ごくわずかな部分を担ったことで裁かれている。

 検察側は、ジャブライル・マフムードフ被告が、自動車で殺害犯を現場に運び、イブラギムが、現場となったアパートに帰宅するポリトコフスカヤの動きを見張り、グループに通報する役割を果たし、逃亡中の、3人目の兄弟が殺害を実行したと主張している。

 元警官のハジクルバーノフは、マフムードフ兄弟をグループに引き入れ、銃を提供したとされる。4人目の被告で元FSB職員のリャグーゾフは、他の恐喝事件で逮捕されたままだ。

 ポリトコフスカヤの遺族の弁護士スタビツカヤは、「再審はこの秋にも、前回と同じモスクワ地区軍事裁判所で開かれるだろう」との見通しを語る。

 ポリトコフスカヤ殺害事件は、ロシア国内で働くジャーナリストの安全を脅かすものとして、国際的に大きく非難された。ロシアのチャイカ検事総長は、2007年の9月に「事件はロシア政府の権威を失墜させようとしたものであり、殺害犯はすでに外国に逃亡した」との見方を示した。

 一方で遺族側は、検察側がこの事件についてほとんど捜査を行っていないことに対する憤りを隠さない。息子のイリヤは、2月に前回の裁判が被告人たちの無罪に終わった際、「被告人たちは母の殺害事件に関わっているとは思うが、もし有罪となっていたら、その時点で政府は捜査を一切やめて、真犯人や、その背後で指示した人間を探さなくなるだろう」と発言していた。

 ノーヴァヤ・ガゼータのセルゲイ・ソコロフ副編集長は「我々は事件の黒幕と真犯人の引き続き関心を持ちつづける。今進んでいることは訴訟手続きなどではなく、この決定もまた政治的動機に基づいたものだ。政府は、誰でもいいから監獄に送り込みたいのだ」とラジオのエホー・モスクブイで語った。

http://www.moscowtimes.ru/article/600/42/379086.htm