イングーシの状況についてのQ&A (6/22 Gurdian)


 6月22日の、イングーシ大統領に対する自爆攻撃は、イスラム過激派の活動によるものと思われます。ルーク・ハーディングが、これまでの経緯と今後の見通しについて解説します。

事件の黒幕は誰?

 エフクロフ大統領への攻撃は、おそらくイスラム過激派によるものでしょう。彼らは現地の連邦寄りの政府を打倒し、イスラムに基づく統治を樹立しようとしています。この運動は、二度の戦争を経験した、チェチェン独立運動に連なるものです。現在は北コーカサス全域の抵抗運動になりつつあり、イスラム教人口の多いイングーシとダゲスタンで盛んです。

現地の住民はこの抵抗運動を支持しているのか?

 現地の住民は、2004年7月の大叛乱以来、消極的です。この事件では、チェチェンとイングーシの戦士たちがナズランの街を占拠し、連邦側に死者100人の被害を与えました。それ以来、連邦側は叛乱に対する掃討作戦をすすめ、これによって住民の拷問、強制失踪、死亡が相次いでいます。人権団体によれば、こうした活動によって若年層がかえって叛乱に活路を見出す例が増えています。

ユヌースベク・エフクロフって誰ですか?

 エフクロフ(45歳)は、2008年10月に、FSB出身のジアジコフ前大統領の後任の大統領に就任しました。エフクロフはただちにジアジコフ時代の過酷な政策を一部見直しました。また、新しい人権評議会を設置し、強制失踪被害者家族と面会したり、行政当局の腐敗を抑えようとしました。ジアジコフの時よりも身辺警護は少なかったので、何度か暗殺未遂事件が起こりました。叛乱側から見て、連邦の権力を象徴する人物にはちがいないようです。

ロシア政府に、北コーカサスの叛乱に対処する戦略はあるの?

 政府側は、北コーカサスでの相次ぐ要人の殺害をもっとも問題視していますが、対策はほとんどできていません。メドヴェージェフ大統領は今月6月にダゲスタンを視察していますが、これもダゲスタンの行政当局のトップが、結婚式の会場で射殺されてから4日後というタイミングでした。FSBは対テロ掃討作戦で応酬しています。ロシア政府はチェチェンラムザン・カディロフ大統領をイングーシとダゲスタンの治安にあたらせようとしていますが、成功はおぼつきません。むしろカディロフの残忍な方針がこうした叛乱を招いているからです。

叛乱側はすべてイスラム急進派なの?

最初からそうだったわけではありません。多くの若者は、北コーカサス特有の貧困や失業率の高さに苛立っており、そのために叛乱に加わりますから、宗教よりそういった要因の方が大きいです。また、家族を治安部隊に殺害されたために、叛乱に加わる人々もいます。専門家によれば、そういう若者たちがイスラム急進勢力に回収されて行きます。

アル・カーイダその他のイスラム急進派は資金援助をしているの?

ロシア国外からの、小規模な援助の証拠はあります。しかし北コーカサスの叛乱はこの地域で生まれ、土地の人々が支えているものです。カディロフやほかのロシア政府当局者は、ロシアの南部国境を不安定化するために、西側、とくにアメリカとイギリスが叛乱を支援していると非難していますが、この主張は専門家からは相手にされていません。

http://www.guardian.co.uk/world/2009/jun/22/ingushetia-insurgency-question-and-answer