リトビネンコ殺害容疑者は、被害者だった? ルゴボイ議員が下院選に向けたPR活動

(モスクワタイムス、12月1日)

 意外な展開が昨日あった。ロシアの捜査当局は、5年前にロンドンで元FSB職員のアレクサンドル・リトビネンコ氏を5年前に殺害した有力な容疑者アンドレイ・ルゴボイ(KGBソ連国家保安委員会の元職員)が、同様の放射性物質の摂取による症状に陥ったことを、いきなり発表した。

 ルゴボイ容疑者は、2006年の11月、ロンドンのホテルでの会合の際、放射性物質ポロミウム210を入れたお茶を、リトビネンコ氏と、ビジネスマンのコフツン氏に飲ませたとされている。

 「ルゴボイ容疑者が被害者であった」という今回の発表は、かつて事件当時に、ルゴボイ容疑者が健康検査を受けた際に、なんら放射性物質が出なかったという当時の発表と矛盾する。

 捜査当局のスポークスマンは、「ルゴボイ氏は、ポロニウム210をリトビネンコ氏との会合の際に投与された。ルゴボイ氏はこの事件の被害者と考えるべきだ」と語った。

 リトビネンコ氏は、ロシア連邦保安局(FSB、旧KGB)の元士官で、ある時期からロシア政府に批判的な立場から言論活動を行っていた。2006年のルゴボイ氏との会合の4日後に放射能による劇症で急死した。

 死の直前、リトビネンコ氏は殺害を命じたのがロシアのプーチン大統領であることを声明していた。冷戦時代を思わせる殺害手法に英国の捜査当局も注目していた。

 しかしロシア捜査当局は今回、「事件は、リトビネンコ氏だけでなく、コフツン氏とルゴボイ氏を殺害するためのものであり、その犯人はいまだに逮捕されていない」との見方を示した。
 
 事件の犯人でないことを主張するために、ルゴボイ氏は自分の身体が放射性物質に「汚染されていない」ことを繰り返し言明していた。しかし昨日、彼は前言を翻したことになる。
 
 彼は「私はこの5年間、私自身が被害者なんだと言いつづけてきました。肉体的にも、精神的にも。(当局の発表があって)私は満足しています」とメディアに語った。

 現在はロシア下院議員(ロシア自民党所属)であるルゴボイ容疑者。英国当局は同容疑者の引き渡しを求めてきたが、つねにこの件は英露関係のネックになっていた。

 事件から5年も経った今、なぜこのような発表が急にされたのか。消息筋は、その理由が12月4日に投票日を迎えるロシア下院選にあると指摘する。

 政治情報センターのアレクセイ・ムーヒン研究員は、この動きについて、「ルゴボイ再選のためのPRだ」と一蹴した。

http://www.themoscowtimes.com/news/article/lugovoi-declared-poison-victim-too/448980.html