#415 「アパート連続爆破事件が忘れられてはならない」ロシア追放の記者が語る

chechen2014-01-15

チェチェンニュース(転送・転載・引用歓迎)


 二つのニュースをお届けします。

 チェチェン民兵の、シリア反体制派への参加をロシア政府側は相当嫌っているようです。北コーカサスでもいろいろな動きがあるようですが、とりあえずモスクワタイムスに、関連のチェチェン人が訴追された事件が掲載されていたので、翻訳して紹介します。

 次に、アメリカ人のベテラン記者サッターがロシアへの入国を拒否された事件です。くわしくは15日の毎日新聞を見ていただきたいのですが、おそらくロシア連邦保安局(FSB)の決定による追放です。
http://mainichi.jp/select/news/20140115k0000e030211000c.html

 サッターは1999年のモスクワアパート爆破事件について、「FSBプーチンを大統領にするためにやった謀略だ」と批判してきました。そのあたりを、イギリスの「ガーディアン」紙のルーク・ハーディング記者が、サッターへのインタビューも交えながら伝えていたので、主要部分を翻訳しました。


チェチェン人、シリア反体制派に参加の容疑で訴追される
 12 January 2014   モスクワタイムス


 チェチェンの検察当局は、シリアで反反体制派に加わって戦った、チェチェン人のシャヒード・テミルブラートフ容疑者に対する訴追を開始した。当局によれば、同容疑者は2013年6月からシリア反体制派に「積極的に参加した」という。

 テミルブラートフの容疑は「ロシアの権益を妨害する目的で外国の武装勢力に参加した」というもの。最大6年間の懲役刑となる。ロシアは国連安全保障理事会などでシリアのアサド政権の主要な支援国であり、プーチン大統領は9月にニューヨークタイムスへの寄稿の中で、次のように述べている。

 「西側国家や、ロシアから、数百人の志願兵がシリアの反体制派に参加していることに対して、ロシア政府は深く憂慮している」

 ロシア連邦保安局(FSB)のスミルノフ副長官はこの9月、300〜400人のロシア人がシリアで反体制派に参加していると発言している。また、昨年は北コーカサス人2人が、シリア反体制派に参加したために逮捕されている。

Prosecutors Suspect Chechen of Fighting Alongside Syrian Rebels
http://www.themoscowtimes.com/news/article/prosecutors-suspect-chechen-of-fighting-alongside-syrian-rebels/492500.html


■ロシア政府、アメリカ人ジャーナリストを説明なく入国拒否
 「ガーディアン」、ルーク・ハーディング記者 2014年1月14日


 キエフの領事がデヴィッド・サッターのロシアビザ更新を拒否した際に示した理由は、「所管官庁が、あなたのロシアへの入国は望ましくないと判断した」というものだった。こういう場合の所管官庁というのは連邦保安局(FSB)で、スパイ事件の際に使われる口上だ。

 ソチオリンピックの開会を2月7日に控えて、ロシア政府はイメージを改善するために、著名な政治的囚人を解放してきた。ミハイル・ホドルコフスキー、グリーンピースの活動家、パンクバンド「プッシー・ライオット」の2人のメンバー。サッターの入国拒否はそんなときに起きた。

入国拒否の理由はわからないが、サッター自身の推測は、1999年に起こったモスクワアパート爆破事件が「チェチェンに対する戦争を正当化するために起こされた、ロシア政府の自作自演の謀略だ」といちはやく指摘し、それについての本も書いたからではないか、というものだ。

 各地での連続爆破事件で300人の市民が死亡していた1999年の9月に、ロシアの地方都市リャザンの集合住宅でも爆弾が発見され、住民が避難する騒ぎが起きたが、その翌日、 FSB のパトルーシェフ長官(当時)は、「これは訓練だ」と発表した。

 連続爆破は、当時首相だったプーチンの人気を高めて大統領への道を開くために、FSBが秘密裏に行った謀略で、その証拠はいくらでもあると、サッターは2003年に刊行された著書『Darkness of Down (夜明けの闇)』で指摘している。この本は、『プーチンが大統領になった理由』というタイトルで2013年2月にロシアで再版されていた。

 何者かに殺害されたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤや、元FSB職員のアレクサンドル・リトヴィネンコも同様の見方をしていた。

 「私がやりたいのは、歴史的な事件に、人々の関心を向ける仕事なんだ。もっとも汚くて、悲惨な事件であってもね。ロシアにまた入りたいのは、連続爆破事件について書くためじゃない。それはもうやった。他にも、2004年のベスラン学校占拠事件では、334 人もの人ーほとんど子どもたちーが死んだ。そういった事件が忘れられていいとは全然思えないんだ」と、サッターは言う。

Russia expels US journalist David Satter without explanation
Luke Harding The Guardian, Tuesday 14 January 2014
http://www.theguardian.com/world/2014/jan/13/russia-expels-american-journalist-david-satter

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