#339 スタブロポリで爆破事件、死傷者40人以上
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INDEX
* スタブロポリで爆破事件、死傷者40人以上
*「ウィーンでの殺人事件にカディロフが関与」オーストリア政府発表
*「ジャーナリストとしての仕事を続けることが、〈復讐〉──」
雑誌『nudei』に、ミラシナ記者インタビュー記事掲載
* イベント情報
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スタブロポリで爆破事件、死傷者40人以上
ロシア南部の都市スタブロポリで爆破事件が発生した。捜査当局者によれば、事件はチェチェン舞踊団の公演の直前に、文化スポーツ宮殿(劇場)の目の前で起こり、40人にのぼる死傷者の多くは、公演を見にきた人々だという。ロシア検察庁は、事件に関してテロの疑いがあるとして捜査を開始した。
スタブロポリ地方は、紛争の続く北コーカサスに隣接しているが、民族的にはロシア人が中心。これまでこうした爆破事件の例は少ない。
3月29日に発生したモスクワでの地下鉄爆破事件のあと、犯行声明を出したチェチェン独立派のドッカ・ウマーロフらは、チェチェンや北コーカサス以外の土地での戦闘の可能性をほのめかしていた。
ロシア検察庁の声明によれば、26日の爆破事件の際、現場近くの劇場ではチェチェンから来た「ワイナハ」舞踊団によるショーが始まる15分前だった。ちなみに、ワイナハというのは、チェチェン人とイングーシ人を合わせた民族名で、「われわれ」という意味だ。
「ワイナハ」は、チェチェン親ロシア派傀儡政府公認の舞踊団で、カバルディノ・バルカリアなど、近隣のコーカサス諸国での公演活動をしていた。ラムザン・カディロフが、「ワイナハ」の舞台に飛び入りしている様子の写真もある。カディロフはこういうパフォーマンスをよくする。

http://visualrian.com/images/item/516879 (写真の右側の人物がRK)
モスクワニュースによると、ロシア議会安全委員会副委員長のゲンナジー・グドコフ議員は、この事件が北コーカサスの過激派によるものだとは、必ずしも言いきれないと考えている。紛争地からやってきた舞踊団を観にきた人々を殺害する意味がわからないからだ。「むしろロシア民族主義者たちの犯行ではないか」と、同議員は言う。
スタブロポリは、チェチェンの首都グローズヌイから350キロほどの場所にある。昨年、2009年に新設された「北コーカサス連邦管区」に合併された。かつて、第一次チェチェン戦争の際、1995年にはこの地方のブジョンノフスクの病院を、独立派のシャミーリ・バサーエフらの部隊が占拠したこともある。この時は、ロシア軍の攻撃で100人ほどの民間人が死傷した。
爆破事件の犯行声明はまだない。
Russian nationalists and Chechen extremists in the frame over deadly blast
http://www.mn.ru/news/20100527/187846170.html
「ウィーンでの殺人事件にカディロフが関与」オーストリア政府発表
オーストリア政府の内務・対テロリズム部門は、2009年の1月に、ウィーンの路上で、亡命チェチェン人ウマル・イスライロフ氏が殺害された事件についての最終報告書を発表し、事件にチェチェン大統領ラムザン・カディロフ(親ロシア派)が関与したという見解を公にした。
事件当時、ヨーロッパ人権裁判所ではカディロフを相手取った複数の訴訟が行われており、イスライロフは自分自身が拷問を受けたことを証言していた。
最終報告書は、イスライロフ殺害の実行犯2名と、9名の共犯者を特定しており、これらのチェチェン人たちによって構成される「死の部隊」の指揮系統が、最終的にチェチェン大統領につながるものであることを明らかにしている。
ロシア政府は、こうしたチェチェン人の犯罪者を養うだけでなく、ヨーロッパの都市にまで派遣している。結果、カディロフの支配に反対する人々や、証言者たちは、暴力と恐怖に絶え間なく悩まされている。イスライロフはオーストリア政府や情報機関に対して繰り返し保護を求めていたが、政府側は応じなかった。
(また、イスライロフ事件での証人となったある人物は、保護が認められなかったばかりか、ロシアに送還された。帰国すれば、拘束され、虐待を受けることが予想されたにもかかわらず)
この最終報告書は、捜査機関から検察に送致されており、近日中にも犯人たちの国際指名手配が行われると思われる。
基本的人権のためのヨーロッパセンター(ECCHR)
http://www.ecchr.de/kadyrov_case.html
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「ジャーナリストとしての仕事を続けることが、〈復讐〉──」
雑誌『nudei』に、ミラシナ記者インタビュー記事掲載
フォーラム色川の安東つとむ氏が発行している雑誌『nudei(ヌーディー)』第5号に、先月来日したノーヴァヤ・ガゼータ紙のエレナ・ミラシナ記者へのインタビュー記事が掲載された。
ロシアで真実を伝えることは、死を覚悟すること。2006年に殺害されたアンナ・ポリトコフスカヤの殺害事件はその動かぬ証拠だった。そのアンナの後輩にあたるミラシナ記者は、「あなたは恐怖を感じないのか、これからどう生きていくのか」という同誌の質問に対して、「恐怖より怒りを感じます。〈復讐〉したいと思いす。その方法は、ジャーナリストの仕事を続けて、こういう人たちが殺される理由になったその仕事を受け継いでいくことです」と答えるのだった。
そのほか、今回のミラシナ記者日本訪問の全体的な雰囲気がわかる『nudei』は、次の連絡先で注文を受け付けている。ぜひご購入を。
(株)街風通信 Tel&Fax 03-6762-5560 定価840円
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イベント情報
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★ 5/30 新宿:沖縄を裏切るな! 新宿ど真ん中デモ
http://d.hatena.ne.jp/hansentoteikounofesta09/20100530
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★ 5/30 大阪:排外主義を許さない5・30関西集会
http://shukai530.blog21.fc2.com/
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★ 6/5 吉祥寺:講座「現代史を読む」第37回
色川大吉先生は戦後史をどう生きたか
http://d.hatena.ne.jp/chechen/00000523
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★ 6/6 秋葉原:秋葉原デモ2010.6.6 いきづらいぃぃぃっ! (# ̄З
http://akibademo.blog24.fc2.com/
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★ 6/20 渋谷:かぞくをかえして! ともだちをかえして!
入管の人権侵害に反対するデモ
http://pinkydra.exblog.jp/12683502/
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★ 7/2-11 山形:『質的に異なる生活ー大富亮個展』
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20100509
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★ 8/27 御茶ノ水:『アンナへの手紙』上映会(PARC自由学校)
http://www.parc-jp.org/freeschool/2010/kouza/kouza_23.html
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★ 8/27-9/1 新宿:『質的に異なる生活ー大富亮個展』
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20100509
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■映画・連続講座
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★ 『ビルマVJ 消された革命』
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★ 『クロッシング』
北朝鮮、脱北と引き裂かれた家族の衝撃
http://www.crossing-movie.jp/
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★ 『アメリカ帰還兵(IVAW)イラクに誓う』
許しを請うのではなく──
イラク帰還兵士が、自らの意志で再びイラクを訪れ、誓った。
この戦争と占領を終わらせるために、
イラクや世界の人々とともに歩みつづける。
http://www.peacetv.jp/movie.html
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★『沈黙を破る』
考えるのをやめたとき、僕は怪物になったーー
「祖国への裏切り」と非難されながらも加害行為を告白する、
若いイスラエル兵士たちがいた。
http://www.cine.co.jp/chinmoku/
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★『ビリン・闘いの村』
パレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のビリン村。
若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。
http://www.hamsafilms.com/bilin/
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チェチェン略史
1682年 ピョートル大帝即位。チェチェンなど、コーカサスへの侵略を開始。以後、断続的に戦いが続く
1861年 ロシア、チェチェンを併合
1864年 チェチェン人、ダゲスタン人などの国外強制移住政策が実行される
1944年 スターリンが、ナチスドイツへの協力の疑いを理由にチェチェンとイングーシの全住民50万人を中央アジアに強制的に移住させ、半数近くが死亡
1991年 ソ連邦崩壊。チェチェン、ロシアからの独立を宣言
1994年12月 ロシア軍、第1次チェチェン侵攻を開始
1996年8月 ハサブユルト和平合意。独立問題を5年間先送りしロシア軍撤退
1997年1月 OSCEの選挙監視のもと、独立派のマスハードフ大統領選出
1997年5月 ロシア・チェチェン平和条約を結ぶ。独立問題は明記されず
1999年8月 野戦司令官バサーエフがダゲスタンで紛争を起こす
1999年9月 ロシア各地で連続爆破事件。ロシア政府は「チェチェンの仕業」と非難
1999年9月 ロシア軍、第2次チェチェン侵攻を開始
1999年10月 親ロシア政権発足。マスハードフ政権との交渉を却下
2002年10月 モスクワ劇場占拠事件
2003年10月 親ロ派のA・カディーロフ大統領就任
2004年5月 カディーロフ大統領暗殺
2004年8月 モスクワ地下鉄駅付近で自爆攻撃
2004年9月 北オセチアのベスランで学校占拠事件。死者330人
2005年3月 ロシア特殊部隊がマスハードフ大統領を殺害
2006年10月 アンナ・ポリトコフスカヤ記者殺害される。同様の事件続く
2007年3月 カディーロフの次男ラムザンが大統領に就任
2009年5月 ロシア政府、チェチェンの対テロ体制終了宣言
#338
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先日のミラシナ記者の講演会、100人をこえる多数の方々に来ていただき、ありがとうございました。多くの市民、報道関係者が参加され、充実した報告会となりました。新聞にも掲載されています。
http://tinyurl.com/23f6b7k (PDFファイルが開きます)
さて、私も今知ったので大急ぎでお知らせする次第なのですが、ミラシナ記者の出演するBS番組が、22時から放送されます。BSお持ちの方は、ぜひご覧ください。
http://www.nhk.or.jp/kyounosekai/
ご意見ご感想はこちらから:
https://www.nhk.or.jp/kyounosekai/opinion/index.html
そして、今号のチェチェンニュースでは、ミラシナさんが16日の、記者懇談会の様子をお伝えします。17日に開かれた集会は、さらに密度の濃いものでしたので、また改めて流します。
本当に直前ですみません。
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■2010年4月16日 記者懇談会での報告内容
タニヤ・ロクシナ(HRWモスクワ副事務所長):
3月29日に起こったモスクワの事件は、結局、ロシア政府による北コーカサスでの政策が、何もうまくいっていないことの証明だと思います。10年前、モスクワを初めとする諸都市のアパートが爆破されたとき、プーチンは「テロとは断固として戦い、テロリストを抹殺する」というメッセージを出しましたが、状況はその時より悪くなっていると言えます。政府は逆のことを宣伝していますが、北コーカサスに広がっている「ジハード」やテロ活動を軽視することはできません。
第2次チェチェン戦争では、本当にひどい人権侵害、強制失踪、拷問、暗殺などが行われてきました。それは今、チェチェンの隣のイングーシでも行われています。1999年からの10年間、強制失踪による被害は最大5千人に及びます。それに対する不処罰の横行は大変ひどいです。これまで、欧州人権裁判所は、チェチェンに関して130件に及ぶ判決を下しました。そのほとんどはロシアに責任があることを認めたもので、それらは法的拘束力がありますが、ロシアは判決に従っていません。法律で決まっていることを政府が守らなければ、国民と政府の間は広がっていきます。
テロリズムは国際的な問題ですが、地元の人々の協力なくしてはそれと戦うことができません。しかし当局による人権侵害がすさまじいと、人々は協力するというより、むしろ政府を敵視するようになります。これはテロリストたちにとって、新しいメンバーをリクルートしやすい状況です。合法的に政府批判をする場所がまったくない──表現の自由も、報道の自由もない中、自分や家族が人権侵害を受けた若者たちは絶望し、武装勢力に加わっていくのです。
少数の勇気ある人々が、こうした「不処罰」の慣習に反対の声を上げていますが、それは大変危険なことです。特に、ロシア社会でチェチェンの問題を取り上げることは、死を意味します。2006年に暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤの件も、犯人はまったく処罰されていません。
暗殺者たちが処罰されない慣習ができるのは、危険きわまりないことです。去年、人権活動家のナターリア・エステミローワが殺害されました。この人は、外国のジャーナリストや人権団体など、さまざまな人の情報源になっていた人です。その2009年だけで、人権活動家、弁護士、ジャーナリストなど、6人の人々が殺害されました。そのうち4人は、私のとても親しい友人たちでした。こうした事件の犯人も、まったく処罰されていません。
今のロシアにも、独立したジャーナリストなどの小さなコミュニティーはありますが、欧米からの支援によって成り立っています。日本の社会も、こうしたコミュニティーを助けて欲しいと思います。とくに、ロシア社会には不処罰という問題があるということを、日本でも伝えて欲しいです。メドヴェージェフ大統領に関しては、「人権を重視する」ということをたびたび発言していますが、彼は言葉だけでなく、行動すべきです。
エレナ・ミラシナ(『ノーバヤ・ガゼータ』記者):
私の同僚である、アンナ・ポリトコフスカヤの本を日本で出してくれた出版社や、支援グループの人々に、まず感謝したいと思います。彼女の本は、スロバキアのような小さな国でも出版され、場合によっては無料で配布されていますが、その一方、ロシアでは出版もされていないのです。
私は『ノーバヤ・ガゼータ』紙に、記者として13年間勤めて来ました。最初の頃、ロシアは民主的社会になりつつありましたが、今、報道の自由がまったくない国になってしまいました。それなのに、欧米の政府でさえ、「ロシアにも独立したメディアが存在する」などと言います。確かに『ノーバヤ・ガゼータ』は独立しており、私も自由に書くことができますが、ロシアに報道の自由があるかどうかという問いについては、2つの例えでお答えしたいと思います。
1つは、つい最近の3月29日に起こったモスクワ地下鉄爆破事件のことです。この事件では、時間をおいて爆発した2つの爆弾によって死傷者が出ました。最初の爆弾が爆発してから、地下鉄はしばらく止まり、状況がわからなくて困った人々は携帯電話で自宅や会社に電話して、何が起こっているのかを確かめようとしました。しかし、この事件の速報はどのテレビにも出なかったので、誰にも答えようがありませんでした。そうして、何も知らずに電車の中で待っていた人々は、2回目の爆発で命を落としました。
この間40分間、たくさんあるテレビのチャンネルは、どれひとつとして事件のことを伝えませんでした。なぜかというと、テレビの経営者たちは、政府の指示を待っていたからです。この事件をどう報道すればいいのかと。
もう1つは、日本に来たときに始めて知ったニュースですが、ロシアの『ノーボエ・ブレーミヤ』という雑誌の編集部に対して、警察と検察が強制捜索を行ったというニュースです。この雑誌に掲載されたある記事に対する報復です。これは私の所属する新聞でも、いつでも起こりうることです。実際、ロシアでは犯罪者よりも警察の方がよほど怖い存在です。
このように、ロシアのジャーナリズムはプロパガンダのシステムの一部に成り下がっており、その結果として、多数の人命が失われている現実があります。2004年のベスラン学校占拠人質事件のとき、中には千人もの人質が取られていましたが、ロシアのメディアは最後まで人質は350人しかいないと言いつづけました。
というわけで、ロシアには報道の自由は存在していません。私は、西側にあるような民主主義は重要な価値を持っており、今のロシアの制度より進んでいると考えています。民主主義がないために、ロシアの社会は徐々におかしくなっていますね。こうした現象の一番ひどいところが、北コーカサス地方です。
これは、ロシアの中の問題ではなく、グローバルな問題、文明に対する挑戦だと思います。人間の生活、人生に対する、もっとも重大な問題が含まれていると、私は思うのです。
ロシアにおいて、警察は法の上にあり、どんな犯罪を犯しても許されます。これは組織犯罪そのものですが、軍だけでなく、そんな警察部隊が「対テロ作戦」のために、チェチェンには送り込まれています。そういう警察官は半年ごとのシフトでチェチェンに送り込まれ、チェチェンでしてきたような残虐なやり方を身につけて、ロシア各地に持ち帰り、そこで同じことを繰り返すのです。
最近、ロシアのスーパーマーケットで、酔っ払った警察官が、居合わせた人7人を射殺する事件がありました。ロシアでは、毎日のように警察官が犯罪を起こしています。そして、処罰はされません。政府は何があっても警察官をかばい、警察官が市民を殴る蹴るしても、それはむしろ忠誠心のあらわれとみなします。私も、ある日本のジャーナリストが、モスクワで反体制派の集会を取材していたところ、警察官に殴られた上、警察官から反体制派とどんな関係があるかを尋問されたという事例を聞きました。
2008年のグルジア戦争のとき、ロシアの当局は、南オセチアのツヒンバリで、グルジア軍が2千人もの民間人を殺戮したと発表しました。外国の記事も、嘘はつかないまでも、こうしたプロパガンダを引用したものが多くありました。
私たちの仕事は、現地で何が起きているかを知らせることです。その方法は簡単で、現地に聞きに行くことです。政治家はそれぞれに政治課題を持っていますから、そのまま信じることはできない場合もありますが、一般の市民に、何が起こったかを聞いていけば、おのずと事実は明らかになっていきます。単純に、遺体の数を数えていくのも有効です。ヒューマン・ライツ・ウォッチはグルジア戦争のとき、その点でとてもいい仕事をしています。やり方はシンプルで、グルジアのあちこちの病院に行き、遺体の数を調べたのです。
今でもロシアでは、聞きに行けば事実を話してくれる人は大勢います。なかなか話してくれる人がいないという意味では、チェチェンと、北朝鮮の体制はよく似ているのではないかと思いますが、ジャーナリストが行けば何かしら話をしてくれる人はいるのです。
ロクシナ:
不処罰の理由は何か? という質問がありましたが、これは政府が義務を果たしたくないからです。国内的にも、対外的にも。ロシアの高官たちが自分の利益を確保する一方、責任はとろうとしないからです。
ミラシナ:
この10年間の間で最大5千人の市民が強制失踪させられました。私たちはこの数のほとんどはすでに殺されたと考えているのですが、こうした強制失踪に対して、処罰されたロシアの警察官はたった1名しかいません。拉致された人の父親が訴追の努力をしたためですが、この裁判をバックアップした人々は、すでに3人とも殺されました。それが、ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤと、弁護士のスタニスラフ・マルケーロフ、人権活動家のナターリア・エステミーロワです。
ロクシナ:
この「最大5千人」という数字の根拠ですが、まず、ロシアでもっとも信頼されている人権団体の「メモリアル」は、強制失踪した3千人の人々の情報を確保しています。これこそが、ほとんどナターリア・エステミーロワによって調査された、非常に確実な情報です。そして、その他のNGOが調査した約2千人を積み上げると、最大5千人となるわけです。ロシアの検察も捜査しなければならないに決まっていますが、「容疑者を特定できないため」という理由で、捜査はほとんどされていません。これは、検察が捜査したくない時の常套句で、今まで何度聞いたか分かりません。
(文責:チェチェンニュース)
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発行部数:1431部 発行人:大富亮
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アンヴァル・シャリーポフが語るもの──
(自爆犯とされた女性の兄で、テロ事件の主犯容疑をかけられている)
http://www.novayagazeta.ru/data/2010/038/14.html
ノーバヤ・ガゼータ 2010年4月12日 イリーナ・ゴルジエンコ
爆破の実行犯と報道されているマリヤム・シャリーポフは、グブデンスク武装勢力のリーダー、マホメダダリ・ワガボフの妻だったとされている。ところが、マリヤムが住んでいたバラハニ村を担当していた連邦保安局(FSB)の幹部はこう言う。
「そういう未確認情報はあったが、たんなる噂話や中傷でもなんでも入るのが未確認情報だ。あてにはできんよ」と。同時にこの幹部は、マリヤムの2人の兄弟は何らかのかたちで地下活動とからんでいると主張した。今、兄アンヴァルとイリヤスは「自爆犯の女性を幇助した」容疑で連邦指名手配になっている。
ダゲスタンの捜査当局は、下の兄イリヤスがゴツァリ村での強盗事件に関係していたと主張している。これは3月4日の事件で「ロシヤ郵便」の現金輸送車が覆面をした数人に襲われたというものだ。しかし、イリヤスはその日、妻のアシヤトの健康診断のために病院に連れて行っていて、そのことは病院の人たちが証言できると言う。
イリヤスは2008年の5月にも、2つの容疑で逮捕されそうになった。1つは誘拐事件。しかし「証拠不十分」で、この事件の捜査は中断された。2つめは武器の不法所持。手製の手榴弾が押収され、違法な武装勢力との結びつきが指摘された。しかし、ウンツクリスク地区裁判所も、ダゲスタン最高裁も「復帰の権利あり」として無罪判決をくだした。
捜査や裁判が行われている間、イリヤスはマハチカラの留置所で拘束されていた。このときの公式の鑑定書に、身体に殴打の跡があったと記されている。これについては親族が証言してもいる。半年後、イリヤスは釈放された。
マリヤムの長兄、アンヴァルはテロ事件が起こるまで、モスクワに住んでいた。モスクワの爆破事件のひとつがマリヤムが起こしたことだと明らかになったあと、アンヴァルは連邦指名手配となった。捜査当局は、まずアンヴァルがモスクワで妹を迎え、地下鉄に連れて行ったとしている。そしてアンヴァルは逃亡した。記者は隠れているアンヴァルと連絡をとることができた。わたしの質問に対する彼の答えのすべてを省略することなく記載する。
「地下鉄の爆発事件についてはニュースで知った。そのときは、これに妹がかかわっているなど想像もつかなかった。あの子がモスクワに来ようとしていることも知らなかったし、いまでも彼女がもうこの世にいないとは信じがたい。妹の死を望む兄なんているわけないだろう。私はずっと以前にモスクワに家族と一緒に出てきて、ここで平穏に暮らし働いている。わたしが故郷を出たのは過去ときっぱり縁を切って、新しい生活を始めるためだ。
爆破があった日、わたしは朝10時過ぎに家を出た。そのあと事件の時まで、私がどこにいたか、1分刻みに証言できる。証言者もいるし、電話の交信記録でも、モスクワ市のいたるところにある監視カメラでもこの間のわたしの居所は証明できる。今は、すべてをわたしの罪にしようとしている。だれも真相をつかみたいと思っていないようだ。捜査当局は、それらしい説が必要なだけで、私はその生け贄だ。実際になかったことを証明する必要がある時に、尋問でどんな方法が使われるか私は知っている」
このアンヴァルの話で、「過去ときっぱり縁を切る」「尋問でどんな方法が使われるか知っている」という言葉があった。調べてみたところ、アンヴァルの過去はなかなか複雑なものだった。

彼はかつて、ギムラ村のイスラム急進派との関係をもっていた。彼の友人の多くが、特殊作戦で殺害され、多くは今も森に隠れて、警察を襲撃する機会を狙っている。この急進派のジャマアトはギムラ村出身のガジマゴメド・マゴメドフが作ったものだ。彼は第1次チェチェン戦争で戦った経験があり、ダゲスタンの地下活動家の重鎮で、2005年にはワハビズム(北コーカサスのイスラム急進主義)の信奉者として、監視対象の筆頭だった。その一方ガジマゴメドはダゲスタンの議会の議員であり、さらに、FSBのエージェントだった。
ワハビズムへの個人的な忠誠を育てるガジマゴメド・マゴメドフのやり方は、独特なものだった。まず、その人物を治安当局につきだす。治安当局は伝統的なやりかたで、容赦なく痛めつける。そこにガジマゴメドが介入し、半死半生の目にあった青年を救い出す。 救い出された青年が恩人を忘れることはない。自分を治安当局に着き出したのが誰なのかは分からないままだ。
アンヴァルも2005年にまさにこれをやられた。マハチカラで治安当局によって誘拐され、天上から逆さまにつるされて、夜通しむごい拷問を受けた。そのあと林に捨て置かれた。その後はアンヴァルはどうにかこうにか彼を誘拐させたのが誰なのかをつきとめ、この集団と縁を切った。
このようなやり方に対して、ガジマドメドフはその森の仲間に殺された。
指名手配されていたアンヴァルは、2006年に恩赦された。「彼は殺人に関係ない」と治安当局は言った。2007年に、彼はモスクワに家族と移住した。今の妻は、ダゲスタンの伝統のスカーフさえかぶったことがない。
シャリポフ兄弟がモスクワのテロ事件に関わりがあるとする説には、ダゲスタンの治安当局さえも疑念を呈している。この兄弟はワハビズムとの関わりを疑われて監視はされていたが、モスクワの事件の規模は、この兄弟が関わるようなちゃちなものではない。
またダゲスタンの治安当局は、モスクワの地下鉄での爆破は強制的におこされたものだと疑っている。それによると、「彼女たちは鞄を運んでくれと頼まれただけで、それを携帯電話からの信号で爆破させることができた。爆破が駅で起きたのは、トンネルの中では携帯電話の電波が届かないからだ。彼女たちの動機が復讐なら、何もあんな遠くまで行く必要はなかった。しかし、捜査をしているのはモスクワだ。モスクワは我々の言うことなど聞く耳をもたない」
どうして、マリヤムの兄弟について私がこんなに詳しく語るのか? 彼らは自爆犯の幇助をしたとされており、しかもアンヴァルは主犯格にされている。これは(当局にとって)とても都合のいい説で、彼の過去を考慮すると本当っぽく聞こえる。しかし、私が求めるのは真相まがいではなく、真相なのだ。
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ミラシナさん、ロクシナさんの記者懇談会の様子
2010年4月16日、弁護士会館にて。

赤毛の人は誰だろう? クローズアップ:

なんと、ヒューマン・ライツ・ウォッチのモスクワ副支部長、タニヤ・ロクシナさんだ。この人はロシアの人権NGOの中ではかなり知られている人です。明日の講演会は、ミラシナさんだけでなく、ロクシナさんからの話も聞くことができます。
日本の人々に伝えたいことはありますか?
「2009年だけで、6人のジャーナリストや人権活動家が殺されました。そのうちの4人は、私たちが親しくしていた、友人と言える人たちでした。ロシアとチェチェンを覆う、人権侵害と、それに関わった治安当局者への不処罰の問題を追っていた人々です。そして、6人の人々が殺されたのに、犯人は捕まえられず、ここでも不処罰が続くのです。日本の人々に、ぜひこの問題を知ってほしいと思います」
という、胸が締め付けられるようなメッセージを寄せてくれました。
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